1967年1月、白梅紅林社から刊行された帆田春樹(1909~1999)の詩集。想定は本田希枝。
この詩集に、なにが潜んでいるか。
読んでくださる心美しい猟人、その狩りの獲物は、いかなるものであろうか。
これまでに、春月・犀星・正夫という詩人たちが褒めた”かまきりのうた””青蛙のうた””藁半紙のうた”を私はかいたが、戦火で灰にした。また、紙・木・石に、美を愛して、しばしば詩を刻みつけてきたが、風に吹かれて飛び散り、雨にたたかれて消えた。
私は、いま、それが人間生活の重量もつものゆえ、<愛・死>に関するうたを、自在に配置したが、生きている鼓動美しい人間の魂に、刻みつけるに価する詩が、一篇でも、果してあるだろうか。追記この詩集作りに、女・男の方たちが協力してくださったが、随筆家・田淵正男氏の名だけを挙げて、みなさんに深謝します。
(「終りあの言葉」より)
目次
・月の熊が
- 木枯のなかで
- 茶の実のうた
- 駅の仔熊
- 望郷
- 召しあがれこの魚
- 月の輪熊が
- 雪ふりぬ
- 浜鴉
- 女の泪
- 淡雪の
・葦の根の紅は
- 十姉妹のうた
- 葦の根の紅は
- 春の夜の
- 花夜を
- 城趾
- 玉石の白に
- 夜桜
- 春の日の
- 白椿のうた
- 春の海鳴り
- 春らんは
- 青のかなしや
- この壷は
・秘めしかのこと
- 秘めしかのこと
- かえらざる
- 知るや鯔の
- にがにしの舌さす
- 銀河の鮎
- 月夜の蟹が
- 詩は
- あじさいのうた
- 夜の妖しい花
- 螢のうた
- 宵待草
- 雨の暑い夜に
- 悲しみは
- 海の音
- 木の実
- 梨の葉うらには
- 人形芝居
- 灯を秘めて
- 嵐でこわれた
- 茶の花
- 茶のうた
- 油蟬
- 誘惑
- 雨斜にふる
- 吊ランプの上高地
- 秋はあなたが
・私が死んだとき
- 鳴けない蝉
- 愛の美しい
- かなかな
- 私が死んだとき
- 悶えのうた
- 焰の踊りに
- 竹のうた:
- 高立粉のうた
- 倖せの朝のうた
- 死んでも身分を
- 闇のうた
- 金と緑と青の環
- 石のうた
・鳴らない笛が
- 鳴らない笛が
- 鼓膜を金の
- 風が誘った
- 寝巻を
- 白い花
- 女の媚
- 詐術の会話
- 女の腋の
- あの二つの丘に
- ま昼
- 帯
- 散る花は
- 渦潮に
- 愛は
- 戦場の荒野の
- ある夜の話
- 人間の愛も祈りも
- 青と朱のうた
- 捉えられたもの
- 女の前から
- あの女たちに
終りの言葉