1980年6月、文童社から刊行された河野仁昭(1929~2012)の第3詩集。表紙は山下汎一。著者は愛媛県生まれ、刊行時の住所は京都市左京区。
前著『瑣事』を出してから、十年になります。いまそれに気づいて、時のたつことの早さに、いささかあきれる思いです。
十年間、エッセイに時間をついやすことが比較的多かったせいもありますが、創作はみじめなほど僅かしかありません。その貧しい仕事をあえて纏める気になりましたのは、最近あいついで亡くなった両親への供養の気持がはたらいたからです。
収録した作品は、主として詩誌『群狼』と『ノッポとチビ』に掲載したものです。「祖母」は主題の関連で前著から再録しました。いつ頃からかわたしは、わたしが感じた詩を多少ともからめとった文章であればよい、と思うようになりました。大部分の作品は、そういう意識で書いたものです。
編集上のことで、黒瀬勝巳君に助言をいただきました。黒瀬君のご紹介で、版画家の山下汎一氏が表紙と扉のデザインをやって下さいました。出版に当っては、文童社の山前五百文社長のお世話になりました。多忙な大野新さんが文章を書いて下さったことも、嬉しく思います。そのほか、いろんな方にさまざまお世話になっております。謝意を表する次第です。
(「あとがき」より)
目次
・村
- 葉鶏頭
- 身のまわりには
- 往還
- 間道
- 墓地
- 焼く
- 手
- 盆踊り唄考
- 童話
- 雪囲い
- 野水仙
- 花のある坂
- シシ垣
・父母
- 杵の音
- 祖母
- 鏡のない家
- 鳳仙花
- 待つ
- 災難
- ごうづけ
- 埋葬
表現者の位置のみえるまで 大野新
あとがき