1957年11月、二元社から刊行された打越美知の詩集。
ここに集めた作品は一九五五年の夏から翌五六年の冬にかけて書いたもので、ほとんどが「アルビレオ」「三田詩人」に発表したものです。一部・二部・三部と分けたのは製作順ではありません。作品によせた、その時々の風景の中を真直に歩いてゆけるようにまとめてみたものです。私の中で詩は、愛するもののために書かれたものが多い。風の中や、光を背にして呼びかけては書きつづけてきたこれ等の作品、それがいま、私の手からはなれてゆく、いいようのない脱皮する悲しみをおぼえます。それとともに今日はもう、昨日の続きではないのだと思わせる、めまぐるしい時代の中で自分の仕事がどれだけの意義を持っているのか、意識することが出来ない貧しさを感じます。
けれどこれからの芸術が詩が、ソシャルなものによつてつながって行くか、エステティックなものによつてつながつて行くかの自識を持たねばならない。そうして更に二つの流れ、社会的なものと、美学的なものとの流れの緊密性を私は自分の仕事の方法にとりいれてゆきたいと思っている。
この貧しい詩集に心よく序詩を書いて下さった串田孫一先生、一つ一つを手に取って力添え下さった水橋晋さんをはじめ、江森国友さんに心からのお礼を申上げます。
目次
序詩 真珠色の風 「風の中で」によせて 串田孫一
Ⅰ
- 林の道
- 風の中で
- 白い雲
- 待つ
- 日向葵
- 街燈
- 振子
- 誰も知らない
Ⅱ
- 初対面
- 五月の恋
- あげは蝶
- 落日
- 夜の時間
- ひでり
- 航海
- 雪の村道
Ⅲ
- 秋の賦
- 心象風景
- お前の声が
- くり返された…ので
NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索