1999年2月、行路社から刊行された名古屋哲夫(1928~)の第4詩集。装幀は倉本修。著者は京都市生まれ、刊行時の住所は京都市北区。
一年ほど前、道を歩いていて不意に「呼ぶ」がのどを突き上げて来て、それから、この世界の見方が変わった。もうすぐ七十が来るということは前から分かっていることだし「朝の紅顔、夕の白骨」は昔から覚悟していたことだし、別に命が惜しいわけではない。ただ、「呼ぶ」の前駆として「異端」があった。しかし「呼ぶ」で今までと違って来たような気がする。生涯詩集を出そうと思った。_
ⅠⅡに分けた。Ⅰは最近の、つまり行路社と契約した、ことし八月末から原稿を渡す九月末までに書いた「疾る」「変装」「秘密」「コロポックル」「わだかまる」「鳴る」「埋葬」「シャワー」「ほっと」「食う」「幻獣」の十三編と、ここ五年ほどの間に、詩とエッセーの同人誌「作文」と地元の現代京都詩話会の月例プリントに載せ、回覧、面と向かって批評していただいたもので、これはありがたかった。
Ⅱは「異端」以前の詩集、詩話会のプリントに載せたものから気に入っているもの、気に入らなくても印象ふかいものを集めた。
この間、テレビで西陣織の伝統産業技術功労者(八十数歳)表彰式が映っていたのをたまたま見たのだが、アナウンサーが「この道七十年ふりかえっていかがですか」の問いに「右むいて左むいたら七十年」というのがあった。
死にかかったことが何度あっても過ぎてしまえば、みな同じなのかも知れない。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
- 火焔連打
- 肉
- こんにちは
- 便り
- 亀裂
- 棄市腰斬
- 街なかで
- 声
- いらくさの眠り
- 朝の魔
- けものみち
- 隠形
- 橋
- 馬
- 死体探知茸
- 飛翔
- はなだれ
- 詩劇 地獄
- エッセー
あとがき