後悔先に立つ 田中民蔵小説集

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 1966年12月、竹頭社から刊行された田中民蔵の遺稿集。編者は田中豊

 

 父は晩年になり学生時代より長年親んできた俳句作りに精を出していたばかりか、青春時代若いエネルギーを注ぎ込んでいた小説を整理、一冊の小説集にまとめ上げる事を何よりの楽ーとし、また宿願ともしておりましたので、その原稿も当時の雑誌「文章世界」「黒耀」あるい「独立樹」等から抜粋し、既に転記も終って、あとは印刷するだけというところで、本当に雨様に逝って了いました。
 明治末期、父は田山花袋前田晁中村武羅夫、水守亀之助諸氏等と盛んに文章活動を続け田山花袋氏の主宰する雑誌「文章世界」に投稿、あるいは「独立樹」という個人雑誌を発行す等、文筆を業とする事にかなりの自信を持っていたようで後年「現代のように文章さえ書けばれて行く時代に生きて見たかった」と口癖のように言っておりました。
 大正四年十月、「文章世界」に発表した、「後悔先に立つ」という一篇は、父自身満足の出来。快心の作品であり、また田山花袋氏に認められた傑作の一つとして、特に此の小説集の標題にる事をかなり前から決めていたようです。
 すでに出版した二つの俳句集「喫々集」と「松の瘤」は長い間の俳句生活の集積とすれば、此の「後悔先に立つ」は短い期間ではあったけれど、父自身の人生の最も気力充実していたもののあらわれかと思います。
(「あとがき/田中豊」より)

 

目次

  • 遺言の執行者
  • 土葬と火葬
  • サンドウイッチの皮
  • 賭場の逃れ
  • ある盗み
  • 高砂
  • 死児
  • 後悔先に立つ

著者略歴
あとがき 田中豊


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