1947年3月、富国出版社から刊行された伊藤佐喜雄(1910~1971)の短編小説集。装幀は小玉邦彦。
これからの日本の文學がどんな變り方をするか私には判らないが、根本の美意識にいちじるしい變化があらうとは想はれない。ただヒューマニズムといふものの現れ方において、これまでの餘りに日本的な(いはば閉徴的な)世界にいろいろ新しい窓が展けてくることは確かだ。間もなく四十の年齢を敷へようとする私自身の文學感情や小説に對する考へ方にも、一つの變り目が來てゐるのを感じる。その意味でこの短篇集は私といふ作家の前期を劃するものになるかも知れぬ。
この集に攻めた作品は「面影「へちびる」「熱帶魚」を除いてみな戦争中に雑誌に發表したものばかりだから、枚数にして二十五枚を超えるものはない。然し「藤娘」「雪女」などは、さうした窮屈な時代の作品としては無理のない好短篇をなしてあると思ふ。
(「奥書」より)
目次
- 藤娘
- 冬日暖景
- 對面
- お京さま
- 鷺舞
- 若年
- 雪女
- 面影
- くちびる
- 熱帶魚
奧書
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