2003年1月、福田正夫詩の会から刊行された金子秀夫の詩集。装画は福田達夫、装幀は福田美鈴。焔選書。刊行時の著者の住所は横浜市西区。
詩集に収めた詩篇は、一九八九年以降現在までのほぼ十三年間に発表したものから選んだ。
本来ならば、もう少し早くまとめたかったが、雑事にまぎれて暮していて遅くなったことと、自分の心の奥底に踏ん切りをつけるなにかが足りなかった。その間、詩選集『金子秀夫詩集』(日本現代詩文庫/土曜美術社出版販売版)を一九九三年に刊行し、同年、小詩集『抽象の迷路』を出した。
考えると五十年以上も詩作にかかわって生きてしまったが、非才にムチ打つこと多く、その境涯もちぐはぐであって、とても自己満足できるものではない。書きちらかした詩稿は散逸しはじめ、大半は紙くずかご行きだが、人の目に触れてもよさそうなのをひろいあげたのがこれらである。
近年、親しい者がつぎつぎと亡くなりだし、死ねばすべて灰になる、にがい自覚もあって、重い腰をあげたのである。
今日まで無難な人生でもなかったが、根が健康だったことに加えて、いろんな人に生かしてもらった人生でもあった。
一九七〇年代終わりから妻の福田美鈴と福田正夫詩の会や詩画展活動やいちいちここに挙げきれないが、いろんな文化活動を実行した。そんなわけで他人の世話をやくことで得るものもあったが、衰亡するエネルギーもあった。
常々、私に激励を送ってくれる美鈴には、早くまとめたらと言われたこともあった。
今回、娘の金子いづみが詩稿をコンピューター処理して助力してくれた。うれしいことである。
また出版には、親しくしている詩人・写真家新井翠翹さんが仲介の労をとってくれたし、北日本印刷役員の吉田隆伸氏の手をわずらわせた。
装禎には、親しい画家の仲間に依頼することを考えたが、なんだか気が重くなった。そこで故人である義兄の日本画家、福田達夫さんの絵を使わせてもらうことにした。「焔」の仲間たちの協力もあり、「焔」選書の一冊として陽の目をみることができ、この詩集にかかわった方々に、ありがとうと感謝を述べたい。どんな読者にめぐりあえるか楽しみである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 夜明けのボンゴ
- 夜明け前のシンフォニー
- 鎌田方晴の馬
- オーロラをもってくる男
- ざくろの木
- はなぞのつくばねうつぎ
- ねずみ
- 思いあがった歌
- 寂しさのうた
- 寂しさのうた
- バラの花讃嘆
- バラの歌悲傷
- バラのアーチ
- 老木
- 生きる理由は
Ⅱ
- いなづまをさがせ
- ウップサラのスズメよ
- 人間の塔
- 叫び出す女
- 航海
- 異土遍在
- 五月の深夜
- ルンビニ遺跡
Ⅲ
あとがき