1952年4月、創成社から刊行された窪寺みどりの作品集。
私は、こんど新制中学生の日の作品をえらんで、本にすることにしました。私は、まだ早いと思ったのですが、新教育の中学生としてのあゆみを、あゆんできた意味で、作品集を出すことにしました。
作品集を出すことは、いろいろすすめられたのですが、私はいまも、連続して新しくひろがっていく作品や、科学の調べものがあるので、私の周囲ではことわっていたのです。それが、こんど私がことわりきれなくなりました。新制中学生の自力の勉強でかちえたものは、順次、生成期にまとめたほうが、ふさわしい意味があると、野口肇先生と創成社のかたが、強い熱意にいわれましたので、それならと、本にすることをおまかせしました。
私たちは、日本ではじめての民主主義の場所に生れあって、健康に平和に学んでいきます。だから、私も小さい自在ランプをもって、小さい発言をしながら、自分の足で歩いて行きます。
この本は、私のからだからとびでた自由律の歌声のそれです。
私は、前から諸新聞、諸雑誌などに書いた詩や、小文から、全国の学校生徒のみなさんや、おとなの世界のみなさんから、私の小さい生活を進ませていくうるおいになる、たくさんの力強いはげましをいただき、この本が、それへのひとつの小さい答えにもなればと、思うのです。
私は、大町中学校生活をかえりみるとき、自由な勉強を、受持の尾竹正躬先生がしずかにいたわられましたこと、それはほんとうにありがたいことでした。
また、丸山安一郎校長先生はじめ諸先生に、よい中学生活でありましたことを、同じように感謝するものです。
今、私をあたたかく、強く、ささえてくださる学校教育および研究所、教育研究関係の方方や、おとなの世界のいろいろな学芸分野の方々のお名前やお言葉は、いちいちあげませんが、人間のぬくもりのある力をあたえ、はげまされたひとを、私はすこしも、忘れてはいない。その愛情は、なかなか忘れることはできないのです。
なによりも、私の勉強が新しい答えになっていくように考えております。
ひとつの本を出すとなれば、みんななつかしく、幼い頃のお友だちまで、どのようにうけ とってもらえるかしらと、いろいろの思いが胸をはしります。
おわりに、私たちの人間関係をあたため、はげましあう勉強の協力が、美しいかたちに、たくましく、ひろがりますように、私は、それを心から願うのです。
(「私のことば」より)
目次
- 冬鳥ノオト
- 第一日
- 第二日
- 第三日
- 冬鳥詩集
- 山國
- 高冷地のひと
- 詩
- 出発
- 少女の像
- 探究
- 夕やけの歌
- 高原の歌
- 山
- 泥土板に字を書く
- 人間勉強
私のことば(あとがき)