2006年12月、桜桃花会から再版された日塔貞子(1920~1949)の詩集。底本は1957年発行。監修は安達徹。
日塔貞子の生涯を描いた『雪に燃える花』(安達徹著)を私たち桜桃花会が再版させていただいて六ヶ月あまり経ちました。そのあいだにもふるさとの皆様や県内外の方々から、いろいろな感想やご意見をいただきました。
その生涯や詩を読んで青春時代のひとコマを思い浮かべたという方。これからを生きていく支えになったという方。初めて彼女の存在を知り、山形を改めて見つめなおしたという方々……。
そんな反響の中で貞子の詩集を読んでみたいという声も少なからず聞かれました。
『雪に燃える花』の巻頭を飾った詩「私の墓は」を初めて読んだ時の衝撃的な感動を思い出します。これほど哀しく孤独で、それでいて美しく穏やかな言葉で人生の終焉を綴った詩に今まで出会わなかったからだと思います。
私達は学生時代から立原道造などの詩をずっと愛読していましたが、貞子の詩に共通点を見出したのは、夫日塔聡と彼女が四季派の詩人に影響を受けていたからなのでしょうか。
人生でもっとも多感な時期に結核性関節炎という病と闘いながら、二十八歳の生涯を閉じるまで左手で書き綴った魂の詩を一人でも多くの方に読んでいただきたい、また地元にもこのように素晴らしい感性を持った詩人が存在したことを皆様にお伝えしたいという思いから、このたびの出版にいたりました。
これから先の残り少ない人生を見つめなおす機会を与えてくれた詩集を大切に読み伝えていきたいと思っています。出版にあたり安達徹先生の暖かいご指導と大きなご協力をいただきましたことに心より感謝申し上げます。
なお、若い読者の方々からも読んでいただきたいので、原詩にはないふりがなをふりました。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 私の墓は
- 美しい春の来る村
- 春が来たなら
- 古城址にて
- 日暮れのよしきり
- 夜明け
- 乾いた季節
- もう一つの故里の歌
- 花蔭
- 季節風
- 冬が来る
- 春過ぎる
- 記憶
- 青い芒の丘
- 夢
- 秋の口笛
- 晩秋
- 草原の種族
- 夏逝く日
- 秋風
- 初冬
- 老いた山羊
- 小さな冒険
- 幸福なとき
- 放心のあと
- 冬の朝
- 終りへの一つの願い
- 山のサナトリウム
- 青い木の実
- 絶望の夕に
- 悪魔の手に
- もうじき春だ
- 予告Ⅰ
- 予告Ⅱ
- 春のながれ
- 秋のおわり
- 昼の月
Ⅱ
- 小さな貝
- 囮の小鳥
- 初冬
- 山の湖
- 青い木の実
- 村の晩春
- 帰って下さい
- ひとりの時
- 蜩の夕べ
- 流れ星
- たった一つの言葉
- 夕映と野分
- 灯りをともすと
- はつ秋
- 童話のような光源
- 希いのまえに
- 古い絵本
- 生れた家
- 焦慮
- 山すその荒廖に寂廖
- 美しい冬
- 私のうたは……
- 焔に禱る
Ⅲ
- 阿古都物語
- 鏡物語
あとがき