1972年11月、創英出版から刊行された工藤正広(1943~)の詩集。創英選書3。著者は青森県南津軽生まれのロシア文学者。
これらはとりたてて夢ではあるまい。これら文体の習性に苦しめられる。結局、ぼくらは個々、それぞれの廃屋であったり、地図であったり、徒刑であったりする。貧しい生涯は詩を手職とする。ただ掘鑿ドリルの力が何ものにもうちあたらなければ、あきらめればよい。じぶんもまたもろもろの印象の片鱗の一つでしかないという瞬時の頽唐の想念が、この水平的な「桜桃の村にむけて」を集めさせた。ときおりのつぎはぎ反古、生の門付けをほいとのように拾い集めたものだ。そしてこれらの文体はやがて散文の抑揚に透脱することによって破壊される。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 生
- さまよい
- 仮睡
- 魚容君に
- 犀の棘
- 美人座一行
- 永遠
- 異域の秋――西京の友に
Ⅱ
- ゆめ雪
- 風信――生れことばで
- 絵馬魔子
Ⅲ
- 詩方――岬絶え鳥も飛ばずの魚の形
- 春浅ければ
- 六月の夜
- 病いの雨
- 水桃
Ⅳ
- 戻るさに
- 夏幻
- 桜桃の村にむけて
- 八月の闇のなかに
- さらせんさらせん――十月朔日に
- 秋
- 浦島太郎――父称の記憶に
あとがき
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