1988年6月、青蛾書房から刊行された暮尾淳(1939~)の詩集。装画は五島三子男。
ここに収めたのは、一九七六年から八八年までの作品のうちからの、二八篇である。ほとんどが『コスモス』に発表したものであるが、いくらか手を加えたものもある。
この一二年間に、私は親しい人たちの死に何度か遭遇した。その折々のことをかいた作品が多いのに、自分でも驚いている。私の基本感情は、どうやら悲哀らしい。
私は一八歳まで北海道で過ごした。雪景色が好きだった。白と灰色の冷たい曲線と質感の世界を、どこまでも一人で歩いていき、凍傷にかかったこともある。雪は一晩でみんなを平等に埋めてくれる。そして雪どけの汚濁とともに生命が息吹く。
今回詩集をまとめてみる気になったのは、いまそうしないと、たぶん私はこれらの詩篇を捨ててしまい、過去のなかに埋め尽してしまうだろうと思ったからである。しかしそれにしても、こんな役立たずのがらくたばかりをというおもいは、どうしても拭い切れない。詩をいつまでもかいているなんて、恥ずかしいことである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 八ミリ
- 家族ふらの旅
- 夢からの三景
- N氏へのいたみ歌
- できそこないの旅の唄
- 骨砕き唄
Ⅱ
- 消えた屋根うら
- エリカのこと
- 秘密について
- もうひとつの象のはなし
- 省酸素
- リンゴについて
- 食えばいい
- Yについて
- ふるさと
- ある危篤
- 苗名(なえな)の滝
- 雪の夕ぐれ
- 三十五日忌
- 春の雨
- 「石勝高原」
- ストリップ
- 恋ユエ追ワレテ
- 秋
- 早稲田通り午前二時
- もんどり打って
- 水平線
- 北のスケッチ
あとがき