丘陵の道 坂上清詩集

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 1997年10月、皓星社から刊行された坂上清(1928~)の詩集。著者は兵庫県洲本市生まれ。

 

 《敗戦後から前を書きはじめて、半世紀を越えた。これまでの作品を見直して、一冊にまとめたいと思った。見直しているうちに気が変って、分冊にすることにした。》ここまでは、昨年十一月に出版した詩集「木精の道」の、あとがきに書いた。今回は、「丘陵の道」を、続いて、「虹酉の道」の三分冊ということである。
 「木精の道」はソネット集とした。コスモス忌、多分四回目の時だったと思うが、二次会の席で、隣に座った女性と話が現代詩に及んだとき、現代詩は嫌いだから読まないという、難しいということ、だらだらととりとめなく面白くない、という卒直な話。まずは手にして、読んでもらわなければ、一冊にまとめても無駄であろう。このことが頭にあった。内容のことはともかく、手に持ちゃすく、扱いやすく、気ままに見開いて、そこだけで詩的世界を楽しんでもらおう、と十四行詩にこだわったのである。
 嬉しいことに、向井孝さんから「まず掌の上にのせてたのしみました――本当にたのしむのに手頃の愛すべき詩集――という思いがしました。」と手紙をもらった。また、若い女性画家から「今まで詩というものはどこか難解なもの、という気持ちが致しておりましたが、その見方を多少変えることが出来たように思います。身構えて詩を読んでいた自分自身が、わざわざ難しいものにしていたような……。」という感想をもらって、まず努力の甲斐あったかなと思った次第。しかし現代詩は嫌いだ、といった彼女からはまだ何も伺っていない。
 今回の「丘陵の道」は、テーマを絞ってまとめることにした。敗戦後、日本列島の風景は大きく変ってしまった。高速道路の建設とゴルフ場の造成が、この国の美観を損ね、国土をすっかり荒廃させてしまった。経済的には豊かにたったなどといっているが、庶民はゆとりのない団地に押し込められ、通勤ラッシュが半世紀たっても解決出来ないでいる。団地風景と通勤風景が、この国の戦後の典型的風景であろう。「丘陵の道」は、この二つの風景に関わりある作品をまとめたものである。
(「あとがき」より)

 


目次

・団地風景

  • ことりのように
  • 騒音
  • 放課後の校庭で
  • 開発
  • ショッピングセンター
  • 歩行者天国
  • 非常階段
  • 外科医
  • 証言
  • おつきあい
  • 街角
  • 貝殼と一円玉
  • 釣り競技
  • 凝視
  • シャボン玉の街

・通勤風景

  • DAB
  • 荷物
  • 今朝
  • 銃口とカメラ
  • 制服の集団
  • 事件
  • こころ
  • 流れていく手
  • 風葬
  • いまぼくは

あとがき

 

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