1994年5月、書肆といから刊行された熊沢加代子(1947~)の第2詩集。装幀は金山常吉。刊行時の著者の住所は豊島区長崎。
詩を書かなくとも生きてはいけます。何故なら、私にとって詩は生きていく上での応用問題であって、基本問題ではないからです。生活の基本とはおそらく、飲み食い排泄し歩き見聞き話すといった具体的なことでしょう。だが言葉をもっている人間は当然具体的にだけ生きることには満足せず、時には、抽象的に壁と向き合ったり、抽象的に風に吹かれたり、抽象的に時計の音を聞いたりするようです。そこからが応用問題になるのでしょう。
詩を書くというどこか精神科医のアナリーゼを受けるのにも似た行為。その結果として書き上げた作品を収めました。まとまりのないものになりましたが第一詩集をだして五年、その間に同人誌「街角」「BRACKET」、詩誌「ラ・メール」に掲載されたものです。また未発表のものもあります。
この詩集を上梓するに当たって助言していただいた、吉原幸子・新川和江両氏に心より感謝致します。また、編集・出版を引き受けてくださいました高橋順子さんに心よりお礼申しあげます。
(「あとがき」より)
目次
- お返し
- 眩む
- 窓辺
- 晴天なり
- 梅の漬けかた
- 気がかり
- 食事の輪郭
- 暗幕
- VIDEO
- 短編小説
- WILL
- 春の誕生
- 風
- さくら色
- 或問
- 傘
- 九月
- ソナチネ
- 音楽
- 弦楽のためのレクイエム
- 雪の結晶
- 揺れる絵葉書
- いちばん小さな自己愛
- 男よ
- 応用問題
- 水戸芸術館
- 五つの動詞
- 水籠る
- 傷み
- 曳航
あとがき