2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

濾過器 柴田千秋詩集

1989年5月、思潮社からラ・メール選書の1冊として刊行された柴田千秋(千晶)の第2詩集。第5回ラ・メール新人賞を受賞。 あの冬、私が出逢った愛は、はじめる前から壊れてしまっていた。私はただあきらめるためにだけ、その愛をあじめていた。 愛はいつか終…

連作・志摩 ひかりへの旅 稲葉真弓詩集

2014年3月、港の人から刊行された稲葉真弓の第4詩集。 「母音の川」から十二年ぶりの詩集となった。 小説を書く合間合間に、詩の言葉が水滴のように私のなかに溜まり、それが滴る水のように言葉となって降りそそぐ瞬間を、至福の時として味わった。書き下ろ…

望楼 粒来哲蔵詩集

1977年10月、花神社から刊行された粒来哲蔵(1928~)の第4詩集。第8回高見順賞受賞。 春と夏の、僅かばかりの日数の島暮らしも、十年以上もの年月がたってみると、私をまごうかたない島人に仕上げてくれた。竿を担いで、山小屋というか海小屋というかちょっ…

平凡 井川博年詩集

2010年8月、思潮社から刊行された井川博年の第9詩集。 この詩集のタイトルとなった『平凡』は、もとより二葉亭四迷の「平凡」からとったものです。二葉亭にかぎらず今回は、林芙美子、尾崎翠に始まって、小泉八雲、石川啄木、生田春月、佐藤春夫と、とっくの…

待ちましょう 井川博年詩集

1989年8月、思潮社から刊行された井川博年の第5詩集。 ぼくの作品は語彙に乏しく、詩に必要な飛躍したイメージと力強さに欠け、過去の出来事を再生しているだけであろう。しかしぼくは一貫として「情けない詩」を書こうとつとめてきたのである。(「あとがき…

くだもののにおいのする日 松井啓子詩集 

1980年5月、駒込書房より刊行された松井啓子の第1詩集。34年ぶりに、2014年12月、ゆめある社より新装復刊された。 どうしてだろう。お風呂では知らない人にも人見知りせずすらすら話せ、自分を、明るく礼儀正しい人のように感じる。又、もしあの世というもの…

日本列島星屑町にて 中島玉江詩集

1970年8月、思潮社から刊行された中島玉江(1936~2009)の第一詩集。 詩集『日本列島星屑町にて』に於ける三〇篇の詩は、「別れの唄」「Rちゃんの涙」を除いて一九六一年春から六三年春までの約二年のあいだに書いたものである。(右の二つはそれ以後創っ…

夢の人に 堀内幸枝詩集

1975年9月、無限から刊行された堀内幸枝(1920~)の第5詩集。表紙・扉は高原秋一郎。 これは昭和四十年から、五十年の間に書いた作品から選んだものです。「第二村のアルバム」に入る部分は、別の機会に作りたいと、除いておきました。 子供の日よく遊んだ…

酒食年表第二 寺島珠雄詩集

1990年5月、遅刻の会から刊行された寺島珠雄(1925~1999)の第7詩集 詩集酒食年表第二 目次 1 三碧木星乙丑生れ 2 初酔い 彼の名はK 3 土間にはへっつい 崖上に提灯松 4 小学三年三学期 5 そうだ村の尊重 屋号は初音 6 九十九里童話 カーバイト灯の下で 7 …

失くした季節 金時鐘詩集

2010年2月、藤原書店から刊行された金時鐘(1929~)の第9詩集。第41回高見順賞受賞。 気はずかしくて止めたが、思いとしては「金時鐘抒情詩集」と銘打ちたかった詩集である。日本では特にそうだが、抒情詩といわれるものの多くは自然賛美を基調にしてうたわ…

胸の写真 井川博年詩集

1980年10月、白馬書房から刊行された井川博年(1940~)の第4詩集。 この詩集は、前詩集「花屋の花 鳥屋の鳥」を出して以後の四年間に書いた詩の集成である。詩を書くことは孤独な作業であるが、そこにもやはり多くの他人の存在がかかわっている。身近に読み…

時の雨 高橋順子詩集 

1996年11月、青土社から刊行された高橋順子(1944~)の第7詩集。第48回読売文学賞受賞。 晩い結婚の二年四ヵ月後、連れ合いが強迫神経症を発病しました。原因はさまざまなことが考えられましたが、四六時中側にいる私という存在を、その一つの目から外すわ…

E・ケストナァ詩集(現代の芸術双書ⅩⅣ) 板倉鞆音訳

1965年11月、思潮社から刊行されたエーリッヒ・ケストナーの翻訳詩集。訳者は板倉鞆音(1907~1990)。 これは<Lyrische Hausapotheke>までのケストナァの数冊の詩集からの気ままな選択である。このような形にまとめて、このような見出しをつけたのも、す…

ナフタリンの臭う場所 小長谷清実詩集

1981年6月、れんが書房新社から刊行された小長谷清実(1936~)の第3詩集。1977年から1981年までの詩篇を収録。 目次 ナフタリンの臭う場所 波だつビール 耳朶をうつ 浴室の方へ 壁の方から笑い声 どっちの男か 受話器、握って スーパーの紙袋のなかで 一挙…

熱帯植物園 関口涼子詩集

2004年11月、書肆山田から発行された関口涼子(1970~)の第7詩集。 鳥が鋭い啼声をひびかせる。空間を切り裂くラインをになって飛び立つ。目には捉えにくい刻々の変移と振動を背負って、声なく動かずにいるものの背後で。不規則な時の揺らぎを名づけようと…

鯨のアタマが立っていた 青木はるみ詩集

1981年11月、思潮社から発行された青木はるみ(1933~)の第2詩集。第32回H氏賞受賞。小野十三郎に師事していた。 真夏の午後二時頃のメインストリートは、ふっと人影のとだえる暑さでした。一台のタクシーが降って湧いたように私の前方に停まり、ドアが開い…

見えない隣人 鈴木志郎康詩集

1976年1月、思潮社から発行された鈴木志郎康(1935~)の第8詩集。 ここに集めた詩は一九七四年三月から今年の八月までの間に書かれたもので、そのうち三篇以外すべて発表された。一年半の間に四十篇余りの詩を書いたことになる。日常のこまかなことを詩の素…

夜明けの桃 稲葉真弓詩集

1991年9月、河出書房新社から発行された稲葉真弓(1950~2014)の第二詩集。 人が人に伝えるべきことはなんなのだろう。 あふれる活字の中に身を置きながら、しかしそれらは私が人に伝えたいこととは、あまりにも大きなへだたりがあるような気がする。 小さ…

部屋 最匠展子詩集

1977年11月、地球社から発行された最匠展子の第一詩集。 この、横穴式の住居から、濁った塵芥を運びだすために深夜私はエレベーターに乗る。地上に降りつくまでの箱の中の長い時間。かたちある身辺の夾雑物を、ゴミと一緒に詰めて捨ててゆく。年月の重なりの…

鮎川信夫詩集1945-1955 鮎川信夫詩集

1955年11月、荒地出版社から発行された鮎川信夫(1920~1986)の第一詩集。解説は北村太郎(1922~1992)。 目次 Ⅰ 死んだ男 もしも 明日があるなら 繋船ホテルの朝の歌 1948年 橋上の人 父の死 Ⅱ トルソについて 小さいマリの歌 なぜぼくの手が あなたの死…

ノノミ抄  庄司総一遺稿詩集

1962年3月、思潮社から発行された庄司総一(1906~1961)の遺稿詩集。 サンクチュアリということばには、聖所ということのほか避難所という意味がある。あるいは免罪区。その禁猟区にいはたくさんの鴨が飛んでいたが私はそれを射とうとはしなかった。猟銃で…

東京日記 リチャード・ブローティガン詩集

1992年9月、思潮社から発行されたリチャード・ブローティガン(1935~1984)の第11詩集。翻訳は福間健二(1949~)。原書は1978年の発行。2017年、平凡社から復刊された。 1976年5月から6月、日本に滞在したブローティガンは、日記をつけるようにこれらの詩…

影の威嚇 野沢啓詩集

1983年6月、れんが書房新社から発行された野沢啓(1949~)の第二詩集。 目次 Ⅰ 影の威嚇 物語 風景の来歴 空白の時代を、いま 未来都市 アウシュヴィッツ Ⅱ 夜は千の眼をもつという 夜の消息 夜の儀式 つかれる ブッキッシュな会話 みみず憑き 五月の一日 …

印象牧場 山下千江詩集

1954年5月、長谷川書房から発行された山下千江の第一詩集。序文は金子光晴と服部嘉香。 山下さんの詩集が出る。服部嘉香さんの愛弟子だ。 服部さんが保證して、山下さんの詩集を校正刷のままで見せてもらつたが、一通りよんでみて、たいへん面白いとおもつた…

南極 犬塚堯詩集

1968年3月、地球社から発行された犬塚堯(1924.2.16~1999.1.11)の第一詩集。第19回H氏賞受賞。装幀は司修。「地球」「歴程」同人。 南極のゆきかえりに、がり版ワラ半紙「南極新聞」というのが発行されていた。僕は特派員だったので内地の新聞に報道する義…

ウイルスちゃん 暁方ミセイ詩集

2011年10月、思潮社から発行された暁方ミセイ(1988.8.10~)の第1詩集。第17回中原中也賞受賞。装幀はカニエ・ナハ。 詩集を一読して驚いたのは、同じ作品なのに、投稿の詩として読んだときとはまったく違った感触だったことだ。まとめてみると、(あたり前…

精霊の森 諏訪優詩集

1967年12月、思潮社から発行された諏訪優(1929.4.29~1992.12.26)の第二詩集。 数年ぶりに、詩をまとめてみる気になった。ふりかえってみると、わたし自身にもわたしの周辺にもいろいろな変化があり、わたしの三十代もおわりが近付いている。 詩集『精霊の…

水辺の約束 千葉香織詩集

1993年1月、思潮社から発行された千葉香織の第一詩集。第八回現代詩ラ・メール新人賞受賞。 わたしがいる。 ということに違和感に近い驚きを感じることがある。 自分が、ヒトという生き物で、言葉で考えたり書いたり、それ以前に食べたり息をしたりたくさん…

日本の詩はどこにあるか 藤井貞和詩集

1982年7月、砂子屋書房から発行された藤井貞和の第3詩集。 目次 狼 この日本に詩学もなければ、詩語も… 暗陸 瞽女たちは帰った、唄をのこして… 青のておごにああ 「青」を書くのは夢の色を… 朝潮の力 あんたがわたしの塚のまえを… 装身具 おぼえていますか。…

心理 荒川洋治詩集

2005年5月、みすず書房から発行された荒川洋治の第18詩集。第13回萩原朔太郎賞受賞。 心理は、ときどきの人の心からは、遠いものかもしれない。また、まわりにあるものをうけとめながらも、うけいれない。そんな一瞬あるいは長引くものを、人はかかえること…