この詩集のタイトルとなった『平凡』は、もとより二葉亭四迷の「平凡」からとったものです。二葉亭にかぎらず今回は、林芙美子、尾崎翠に始まって、小泉八雲、石川啄木、生田春月、佐藤春夫と、とっくの昔に死んだ詩人のオンパレードです。意図した訳ではなく好きな詩人を追っかけているうちに、こういうことになりました。
しかし子供の頃から読んでいた啄木や八雲ばかりでなく、最近読んだといっていい林芙美子や尾崎翠も、いずれの人たちも、すべて私に、「文学とはなにか」、「人生いかに生きるか」を教えてくれた大恩人たちです。私はこれらの人たちから、生きるすべてを学んだといっていい。今回の詩集では、そのことに対する私からの感謝の気持ちを伝えたかったのです。
それと同時に、これら先人たちの書いたものにフレ、それへの一方的な会話(私の独り言)を書くことによって、私の中にあった、いろいろな「しがらみ」から解放されたことも事実です。しかも、これらの人たちが居るならば、私を愛してくれた(である)父母や、多くの友達が居るならば、死ぬこともこわくない、ような気分になりました。またすぐ気が変わるにちがいありませんが……(「あとがき」より)
目次
- 芙美子さん、翠さん
- 下馬物語
- *
- バスに乗って
- 村の製材所
- 朝寝坊
- 九官鳥
- 秋の寺
- 語らい
- 雀の朝
- 八つ当たり
- つつがなきや
- ちんどん屋
- つつがなきや2
- 那須への手紙
- われわれはみなマイナー・ポエットである
- *
- 渋民村
- 八雲の耳
- 母の眼鏡
- 湯気を見ながら
- 「佐藤春夫」の服