1970年9月、文童社から刊行された山村信男(1933~)の第2詩集。刊行時の著者は京都大学勤務、住所は京都府乙訓郡日向町。
最初の詩集を出してからはやばやと五年の歳月が流れ去りました。かつて、無二無三に肉身を問いつめた饒舌で血みどろなことばは、いつのまにか凪の海面のように穏やかになって、どこか鎮魂のうたに近くなってしまいました。人は多量のことばを放出したあとには沈黙の泉へ帰りたくなるもののようです。沈黙を創れ!とはキェルケゴールが云ったことばですが、いまになってぼくには思いあたるふしがあります。ことばで沈黙を囲むこと、それによってその深さを具現すること。つまり、ぼくのことばが意味の縛めからいまだに逃れられないでいることの裏には、ひょっとすると、そういう沈黙の形象化への指向性がひとつの磁場として働いていたのではないかと…。そして、現代のようにことばの荒廃が云云されているただなかにあって、ぼくの詩のことばのとりえる道は、沈黙のほとりに立つことから少しずつ肉声のことばを回復していくことではないかと思います。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- はと
- 失踪
- 拾う
- エピローグ
- 呼ばれている
- わびる
- 捨てる
- みちすじ
Ⅱ
- 立つ
- 夕映え
- はとのモチーフ
- 木馬道(きんまみち)
- さずかる
- 分身
- 鳥居道
- 現身
- 漂う
- 父の門
Ⅲ
- 立つ
- めぐみ
- 触れる
- 病む
- ほどく
- 燃える
- 風景
- M先生に
- あかりがいっぱい
あとがき