1965年12月、思潮社から刊行された牟礼慶子(1929~2012)の第2詩集。装幀は安倍真知。
五年前にはじめての詩集「来歴」を出したとき、これでやっと私のうつわはからになったかと、何とも言えない解放感に肩の軽くなる思いをした。自分のすみか――つまり、世の中で最も不明なものを探りあてたいという、途方もない望みが私に詩を書かせる。それだから、時に精神の底にひっかかっている滓のごときものをつつき出すことにもなるのだが、とにかく新しい発見をしてみたいために、また、うつわをからにする作業をくり返してしまう。はたしてからになったものか、あるいは、からになったあと満ちて来るものがあるかどうか、今の私にはそういう不安だけが大きい。
安部真知さんの絵には長いあいだ魅せられていた。半ば強制的な願いにもかかわらず快く装幀をしていただけたことはほんとうにうれしい。
(「あとがき」より)
目次
I
- 魂の領分
- 私の駅
- 港にて
- 臆病な警告
- 私は中身
- 比喩の向こう側
- 擬人法
- 星の幻想
- ふりむくな
- ふしあわせな夏
- ことばの波
- こころ
II
- しかえし
- 春の疾風
- どちらも私
- その先は……
- あなたは誰
- 女の生涯
III
- 威厳にみちた森
- なつかしい風景
- 見えない季節
- もうひとつの季節
- 帰郷
- 天の手
- 林の中の対話
- 豊饒な問答
あとがき