1970年、学習研究社から刊行された畔柳二美の少女小説。1957年のひまわり社それいゆ版の一部を再録。装幀は堀内誠一、装画は岩崎ちひろ。少年少女学研文庫315。
ここにあつめた短篇集は『ジュニアそれいゆ』(現在は廃刊)に、三年ほどつづけて発表した作品が主になっています。
むかしの女学生の生活が中心になっていますが、現在の中学生とおなじ年ごろの成長過程をえがいてみたかったのです。私の著書に、『姉妹』という本がありますが、それの補足といってもいいでしょう。
中学生になると、きゅうに身心ともにのびはじめます。子どもの世界からぬけだして、急速におとなの世界へとちかづくのですが、といって、けっしてそれは、おとなの世界ではありません。知識欲に燃え、理解力が発達しはじめ、もっとも純粋な目を持ちはじめ
年代です。そのたいせつな目を、私は、人間一生のあいだ持ちつづけなければいけない、といまでも考えているのです。この作品の中には、たぶん、どこかで、みなさんと共通したものが、かならずあるのではないかと信じます。それが、どこで共通し、どこで信じあうことができるか、決定的なことはいえませんが、人間の信頼を強める、なにかのプラスになりましたら幸甚です。
若さをたいせつにするということは、日々の生活をたいせつにするとおなじわけなのですが、若い日は思いがけないほど足早にすぎていってしまいます。輝かしい人生の若い日に、せっかくつちかった純粋な目を最大限に発揮して、自分とその周囲を、じいっと見つめておいてください。心に深くきざみこんでおけばおくほど、あなたの人生は、かならず、あなたを純粋な方向へとみちびいてくれると思います。
この小説集が、あなたの目の成長をうながす、なにかのお役にたつならば、心からうれしく思います。(「あとがき」より)
目次
- 雨がさ
- 黒いつめ
- 真実
- おばの慈悲
- おふろ
- 親の愛情
- お茶ぶくろの中に
- 笑顔
- 白いコスモス
- 秋の夜の話
- 青いりんごのふるさと
作者あとがき
*解説==大野允子