1956年3月、ONLYONE詩人グループから刊行された君本昌久(1928~1997)の第1詩集。
これらの詩については作者はあまり言う気持になれない。詩に驚愕をもたらせようとしたが、こゝには驚がない。何によって読者の心を触発せしめよう。それを思うと口をつむってしまうばかりだ。しかし、より根本的にはこれらの詩作は当時の(一九四九――五五年)作者の肉体のミゼラブルから生れた<ひとつの記念>でしかなく、全く生理的な行為の所産であった。だからこの詩集のもつ役割も自からこゝに集約されている。
P・エリュアルの<気紛れ、矛盾、暴力>の意味を秘かに詩の核心とするものにしては、おおよそポエジイの要因からはほど遠いものと思われるが、今もなおこの言葉のもつ意味を作者は常に主題にしている。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 衰弱するヴィジョン
- 声は
- 堕ちた感傷
- 賭け
- 歩く
- 衰弱するヴィジョン
- エチュード
- 姿勢について
- 手紙
- 起源
- 経験
Ⅱ 苦い日
- 苦い日
- ヴァイオレット
- 四月馬鹿
- 破片
- 職がなくて
Ⅲ センチメンタルな貴族
- 秘めたまゝに
- 急げ急げ
- 嘆きの嘆き
- 花ひらく
- 聖なる花一輪
あとがき