1976年1月、思潮社出版から刊行された柴田基典(柴田基孝)の第2詩集。装幀は山口謙二郎。
人はむろん帽子を脱ぐようには自分を脱ぐことはできない。ましてや自分の作品を脱ぐことは容易でない。それでも、私は自分の作品をいかにして脱ぐか、いかにしてこわすか、このようなことばかりをいつも考えている。しかし、到底この迷路のなかの作業はうまくいかないし、やたらに想像力のカギ裂きがふえるのみである。所詮、作者は自分の作品の前の遮断機を永遠に見つめているにすぎないというのであろうか。
私は詩のなかのあらゆる調節弁をこわしてみて、いわば意味重力を捨てた世界を提示し、顔の出口から無重力の口笛を吹いてみるのである。やはり、詩は拾うよりも捨てることに、ま作るよりもこわすことに粘い重点があるというふうに思われて仕方がない。この低地のなかに詩は増殖のホリゾントを持っているようである。
(「あとがき」より)
目次
・影を吸う日
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
- 影を吸う日
- 影を吸う日
・総題のない詩
・その都市は縮んでいる
- 1少量の都市
- 2木製の部屋
- 3やわらかな目的地を
- 4細長い習性
- 5人間の背中
- 6卵形の町
あとがき