2019年3月、七月堂から刊行された窪島誠一郎(1941~)の詩集。
この詩集を出してくださった「七月堂」さんは、私が五十二年間小劇場&ギャラリィ「キッド・アイラック・アート・ホール」(一昨年末閉業)を経営していた東京世田谷の明大前にある出版社である。私は小、中、高時代ずっとこの明大前で育ったので、文字通りここは私の心と身体の生誕地、幼い頃からのなつかしい思い出がつまった町だ。そんな山の手の小さな学生街で、やはり半世紀いじょう良書を出しつづけてこられた七月堂さんを、以前からお付き合いのあった詩人のArimさんが紹介してくださって、とんとん拍子にこの詩集は生まれた。
私はこの夏、命にかかわる病で手術入院し、すっかり悄気(しょげ)かえっていたのだが、退院したらこの詩集を出してもらえる、というのが大きな生きる目標になった。これまで書きためてあった未熟な詩たちに、退院後に書いた何篇かを加えたもので、とても七月堂さんの合格点をもらえるとは思っていなかったのだが、今日こうして一冊にしてもらって夢のようである。
(「後記」より)
目次
- 冷蔵庫
- 装う
- 港
- 何も変わらない 塩田盆地を望む
- 走る人
- 指を切る
- 貧しい老人の恋
- 献身
- 足りる
- 白い雨
- 自裁の人 西部邁氏に
- 饒舌と沈黙
- 「戦(いく)さ」のせいかしら
- わからない
- 喫煙室
- 罪と約束
- ゴミ屋敷
- 長い橋
- 死の匂い
- 安楽死
- ノックはまだ?
- どうも わたしは
- 喪(うしな)う日
- 女好き 母嫌い
- かなしい母
- 車夫日記
- 詩人の写真
- 画家という立場
- 風船と釦(ぼたん)
- 井戸
- 成功譚
- 街
- ぜんぶ、嘘
- 慰撫
後記