1986年4月、近文社から刊行された菊池正の散文詩集。日本詩人叢書5。
これは私の第二散文詩集である。
「長い塀」と「蔵の中」の二篇は詩集『静物』から、そして「別れ霜」「聖家族」「幻花」の三篇は宝文館版の『菊池正詩集』から若干の改稿を加えて再録し、その他は雑誌、新聞、アンソロジー等に発表したものもあるが、詩集にはすべて未収載である。
作品の配列はおおむね年代順となっていて、それぞれ私の初老、仲老といった世代から、死の予感を身近に覚える晚老ともいうべき齢に当たる現在までの、老いの叙情ということになる。
人間は確実に老人となり、必ず無明の彼岸へ向かわねばならない。ならばせめて、その厳粛な因縁を静かに甘受していきたいと思う。
(「後記」より)
目次
・序詩
・老残集
- 長い塀
- 蔵の中
- 別れ霜
- 聖家族
- 幻花
- 雪虫
- 愛歌
- 幻魚悲唱
- 螻蛄記
- 刻銘賦
後記