1994年7月、ふらんす堂から刊行された経田佑介の第6詩集。装幀はスタジオ・ギブ、装画・エッチングは牛尾篤。付録栞は白石かずこ「良寛さはビート詩人」。新しく夢みる詩人叢書3。
ポエトリー・ロードをずいぶん遠くまできたようだ。走ったり、歩いたり。アメリカの旅を書いた散文(詩)集『ニューヨーク動物園の笑う象』は別にして、『泡だつ日々泡だつ海』以降のかなりの量の作品から十五篇を取り出した。八十年代後半にはこういう詩を書いていたのだ。『泡だつ日々泡だつ海』から十六年、『ニューヨーク動物園の笑う象』からでも八年になるから、久しぶりの第六詩集ということになる。
大愚良寛の隠栖した国上山五合庵、彼の托鉢して歩いた出雲崎、寺泊、与板、分水、弥彦などはわたしの住む三条市からそれほど遠くない。それどころか良寛は鉢の子片手にしばしば三条の町をうろついていた。とはいっても、これらの詩でわたしは良寛を書こうとしたのではない。詩で夢を見、詩を生成していく過程で世界認識をふかめ、意識を拡げるのがわたしの詩法と考えると、大愚としての良寛は触媒だったのだと思う。むろん直接のきっかけはあった。アメリカから詩友のサム・ハミルがやってきたとき、良寛詩を論じ、一緒に良寛ランドをまわり、彼の良寛詩の訳に協力したことだ。ともあれこの一冊に、愛と魂の受容、パッションとポエジーの放射が感じられれば嬉しい。
(「あとがき」より)
目次
- 碑のかけら
- 魂鎮め
- 良寛さの道を
- 良寛さ、往く
- 島へ、はあ
- 立ち騒ぐ耳
- 春の雪の野で
- 沈酔する歩行
- 睡魔割ってハートランド
- 越後猿沢で突く
- 五合庵ぬけて
- 冬の夜、 落葉焚く
- 千歩の冬
- 雨の川
- 世紀末の無垢釣り
あとがき