1971年10月、実業之日本社から刊行された北畠八穂の随筆集。
海、深く、小粒な貝が、砂にもぐって住んでいる。その貝がポコッとアブクをふく。
ポコ、ポコ、ポコッと、潮をくぐって水面にうく。
それは、貝の息。貝のつぶやき、貝のうた。
貝は私。吐いたポコポコが、この随筆群。
去年NHKでこの中の少しを朝の時間に放送した。誰も聞いていないだろうと、気やすくしゃべった。案外、
思ってもみないほどの反響がきた。
これはこんな種類の話を、聞きたくて待つむきが相当あるらしいと、いままでにたまった随筆の中から、この種類のを集めてみようかとなった。
(「あとがき」より)
目次
- すばらしいこと
- みごとな暮し
- 田舎の婆さま
- 不思議な才能
- 逆境からつかむ宝の素
- 悲しみは美しく
- かっこう
- 誠実な娼婦
- タエのこと
- 悪人
- おべんとう
- 幽霊をみた
- 美しくなる術
- 不自由が知らすもの
- 時間とのつきあい
- 一炷のけむり
- 菊漬、ほし菊
- 作るたのしみ
- とっておきの話
- むかしばなし
- 夜語り
- 一瞬の冷気
- 二十秒の静視
- 雪に埋めた豆わらじ
- 忘れられない言葉
あとがき