1988年7月、湯川書房から刊行された時里二郎(1952~)の第2詩集。第39回H氏賞候補作品。
本書には当初、その表題となった「採訪記」なる作品が書かれるはずであった。非在の植物・昆虫・鉱物・地誌・人物を採集、探訪するそれぞれの男たちの五つの遍歴譚である。本書に収められた作品には、その書かれなかった「採訪記」の断片のいくつかが紛れこんでいる。ある意味において、それらの断片を孕んでいる本書の作品は、「採訪記」という割れた鏡面の破片であり、それぞれに「採訪記」の陰画が刻されているといえるかもしれない。もって本書の表題とした所以である。
(「覚書」より)
目次
- 大鴉
- 鳩をめぐるStanza
- ダルレス 或いは記憶の地誌
- 或る亡命者への頌
- 闇をめぐる二つのnote
- 植物譜
- 指茸記