1980年1月、西澤書店から刊行された小寺謙吉(1927~)の随筆集。著者は東京芝生まれ、刊行時の住所は世田谷区代田。
伝説的な稀親本を追跡してゆくと、そこに書物と人間の織りなす、ひめやかな葛藤があった。とかく幻の書物などというと、ある神秘的な幻影がつきまとい、畏怖の念を抱かせる魔力があるものだが、本質は、認知されない不幸な運命をもった「負」の相乗価値みたいなものかも知れない。
ここに紹介した三冊の本は、発行以来、まだ世間に姿を見せたことがない不思議な書物だが、必死で追いかけた長い年月をふりかえると、本と人間との出逢いにも、やはり運命としか言いようのない瞬間がある。
(「あとがき」より)
目次
- 児玉花外『社会主義詩集』まぼろしの詩集を死守した男
- 寶石本(ダイヤモンド)『わすれなぐさ』阿蘭陀書房を訪れたひとりの女性
- 東郷青児 古賀春江 薔薇画入『ルウベンスの偽画』美書を愛のかたみにした青春挽歌
あとがき