2003年7月、思潮社から刊行された広部英一の第6詩集。装画は「京からかみ文様(岩崎美術)」。
第五詩集『首蓿』刊行後の五年間に書いた作品から選んで収載しました。初出は「木立ち」「現代詩手帖」「詩学」「GANYMEDE」「イリプス」「詩と創造」「朝日新聞」などですが、全作品とも収載に際して一篇の行数や各篇ごとに一行の字数をそろえるなど、大幅に改作しました。
確たる改作の理由はありません。強いていえば推敲の過程で気紛れな遊び心が起きたからかもしれません。
畝と畝の間を畝間といいます。戦災で家が焼失し、母の村に縁故疎開していた一九四五年八月のある日、少年の私は他家の畑の茄子を無断でもぎとり、その茄子を手にしたまま畝間を素足で逃走したことがあります。六十年後のいまも、あの夏の日の茄子畑の灼けつくような土の熱さと、火傷したかのような足裏の痛みを覚えています。
とすれば私がこれまで書いてきた詩は人生の畝間で書いた遁走の詩だといってもいいのかもしれません。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
- ジャンケン
- 絹雲
- 平凡
- 蓬莱軒
- キャッチボール
- 水曜日
- レッスン
- ワンピース
- 生気
- 相手
Ⅲ
- 新橋
- 一日
- 悪い日
- 光の筵
- 新世界
- 何の木
- 大木
- 雨季
- 林間
Ⅳ
- 日野川
- 良い日
- 寧日
- 青葉
- 雀色時
- 半日
- 故鄉
- 新天地
- 噴水
Ⅴ
- 六月の庭
- 河畔
- うぐいす
- 大池
- 麓の村
- 段段畑
- 高い声
- 栗の樹
- 憂鬱
Ⅵ
- 三十センチ
- 胡蝶
- 唐黍畑
- 水の上
- 道の駅
- 酸味
- 稲架場
あとがき