1969年8月、蜘蛛出版社から刊行された森本敏子(1930~)の第2詩集。装幀は藤本邦之。著者は兵庫県生まれ、刊行時の住所は奈良県天理市。
最初の詩集「海へ」を出してから、足かけ十年になる。当時二歳と五歳だった子供たちは、それぞれ小学五年と中学三年になった。めったに振り返ることをしない私だが、その間に書きためてきた作品の中から、三十二篇をひろいあげるにあたって、ふり返ることをしてみた。平和であった海のある町、明石から、この大和に移り住んだということ以外、一見何ごともおこらなかった。そして、残されたのが詩集「勾配」である。今の時点で選んでみると、やはり昔の作品ほど、今の私からは遠く、したがって古いものも少しはあるが、まずここ一、二年の作品を中心に編んだ。いつまでも未熟ながら今日まで詩をはなさずにこれたのは、喜志邦三先生と「灌木」の皆さんの、強いささえがあったせいで、深く感謝いたします。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 陸橋
- 逃走
- 昨日の歌
- ふりむいては
- 侵蝕
- 締められて
- 勾配が始まる
- のぼる
- 結ぶ
- ここに及んで、
- かたち
- ここでは
- 無色
Ⅱ
- 地面には、
- 触角
- 開始
- たよりⅠ
- たよりⅡ
- たよりⅢ
- たよりⅣ
- 夕焼け
- 笑い顔
Ⅲ
- 街へ
- 絵がふえる
- 円形劇場
- 階段
- あこがれについて
- 例によって
- 涙についての一考察
- 終りのない話
- 原典
- 挨拶
跋 小野菊恵
あとがき