1994年11月、国文社から刊行された大塚欽一(1943~)の第3詩集。装幀は星野徹。著者は水戸生れ、刊行時の住所は水戸市。
<アルキメデスの夢>という言葉がある。それは地球を梃子で動かすために、その外部に支点を求めようとすることであるらしい。私もまた、私という個体の外に確たる支点を求め、そこから私という生命、精神を見つめたいと考えてきた。詩集はその支点を求めるひとつの試みであり、その軌跡でもある。そういう意味で、本詩集は第一詩集『紫陽花の賦』、第二詩集『非在の館』の中間に置かれるべきものであり、未熟で不統一ではあるが、私の思想の萌芽のようなものを混沌としたまま抱えていて、愛着も強いのである。
詩集は三部に分かれている。第一部はすべて平成四年一月から十二月までに茨城新聞の紙上投稿詩欄「茨城詩壇」(星野徹選)に掲載されたものであり、第二部はそれ以前、あるいは前後して書かれた詩篇である。また第三部は、かつて長崎に滞在していた頃見た夏の風物詩「精霊流し」に材を取ったもので、やや長い詩であるので独立させた。
古いものを脱ぎ捨て脱ぎ捨てしながら新しいものを求めてゆく、それが詩業の宿命なのかも知れないと最近思う。そうしながら、私としては、やがて<立ったまま、眼をみひらいたまま死ぬことを、おのれの栄光と考え>(星野徹『範疇論』後書)たいと、秘かに思っている。なお「黄昏幻視」「縮図」は『非在の館』にも載っているが、本来投稿詩であるので、少し修正して本詩集にも採った。
(「後書」より)
目次
1
2
- 蔓薔薇
- 夕焼け
- 螢
- 蝶
- 安達が原
- 梨
- ビーカーの中で
- 天の時計
- 柘榴
- 滝
- まなざし
- 地球
- 地図
3
- 精靈船
後書
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