2008年7月、アーツアンドクラフツから刊行された正津勉(1945~)の詩集。
前詩集『遊山』(二〇〇二年思潮社)以来、六年ぶりの詩集である。
一集は二章立て。一章は、稜線の詩。この十余年、持続してきた山巓へ向かう詩篇を収める。山川草木、鳥獣虫魚……。ここにきてようやくその途もおのずから定まってきたようだ。ほぼ四季に準じ構成する。
二章は、下界の詩。この章には日々に属目する詩篇を収める。故郷離心、痼疾病理……。いまさらながらわが精神の暗い傾斜はどうしようもない。
第一詩集『惨事』(一九七二年国文社)の「後書」に書いた。「自嘲、どうもそれだけがのこるものとしてのこったようだ」
じつになんと三十六年前のことである。いまなおその思いばかりは変わらないとは。
(「後記」より)
目次
Ⅰ
- おいしい水
- イワナ(岩魚)
- カモシカ(羚羊)
- ツツドリ(筒鳥)
- シダ(羊歯)
- 五月の稜線を歩いて
- アカハライモリ (赤腹井守)
- ナガコガネグモ(長黄金蜘蛛)
- アサギマダラ (浅葱斑)
- ガ(蛾)
- 嬉遊曲
- フクロウ(梟)
- ヤマカガシ (赤棟蛇)
- コオロギ (蟋蟀)
- ススキ (芒)
- ベニテングダケ (紅天狗茸)
- 山を往き
- サワガニ(沢蟹)
- シカ(鹿)
- ヒヨドリジョウゴ (鵯上戸)
- トビ(鳶)
- 湯が湧く
- 遊山遊句
- 植村直己
- 星野道夫
Ⅱ
- 廃村
- 廃屋
- 蜩
- 点滅
- さらばさるべしさようなら
- 白梅
- 河原
- 冬の花咲港
- 症例一
- 奇妙な果実
後記