1973年7月、思潮社から刊行された仲地裕子(1945~)の第1詩集。装幀は北小路均。第4回高見順賞候補作品、第24回H氏賞候補作品。現在の筆名は沖野裕美。
なかち・ゆうこ第一詩集は一九六九年夏に出版予定だった作品群に、新たに「わが島に関する異聞」と「遺留館」の二篇を収録して構成した。切りきざまれた貌のごとき詩篇たちは一九六五年の書きだしから一九七〇年間に沖縄島の小出版物に発表した作品が主体となっているのだけど、この中で「遺留館」のみが未発表の分となって残されていた。作品中「不在」は流浪時代のわがヴイヴィの記録であって一冊にまとめる為、再読の時点で冗舌めくたどたどしさが気になったがしかしあえて全行を挿入した。
極限まで変形しつくせる多様態のジェリー質で煮こごった我島で、詩が敷きつめられた言葉のつばきとなるカタストロフのみを重ねつづけて来たわたしの詩行為はおびだたしい錯誤を含有しているだろうけど…。
ところでややまわりくどい出来事だが、沖縄での旧出版物中の「あたし」の作者蘭和美とハピーソングの作者が同一人であることを附記しておく。「あたし」のことばは、ハピーソングの為のメモ以外の何ものでもないことを宣言する。
(「おぼえがき」より)
目次
- じゅん
- かぶとむし異聞
- 子供のはなし
- なつものがたり
- よるのはて
- ドームのできごと
- 泣きわかれ
- プリペアリング
- らんちゅうあいか
- フェステバル
- にじ
- 家系
- 期待だいて
- タノシクテサマヨウ
- 不在
- ハピー・ソング
- 祝祭
- 海とあたしの会話
- わが島に関する異聞
- ソールランドを素足の女が
- 遺留館
おぼえがき