1978年6月、光和堂から刊行された窪田精(1921~2004)の評論集。
目次
・第一章 廃墟のなかから
宮本百合子「歌声よおこれ」/敗戦直後の共産党本部/トラック島より帰る/江口渙と野沢富美子/第一期中央党学校/米よこせデモと食糧メーデー/蔵原惟人「芸術論」と宮本顕治「人民の文学」/党東京地方文化部書記丸山邦男/『新日本文学』創刊準備号/新日本文学会創立大会/党東京地方オルグ
・第二章 2.1闘争前後
全医協東京地方書記局/全医協幹部の人々/都立駒込病院通り/文学青年宇田川次保/共産党本部二階大広間での水曜会/新日本文学会創作コンクール/中野・荒・平野の「政治と文学」論争/大隈講堂での第一回小林多喜二祭/東京都下清瀬村/全医労東京地協書記長/新日本文学会清瀬友の会
・第三章 『勤労者文学』の書き手たち
『キヨセ文学』の創刊/西山安雄・仙土良平と小沢清/清瀬村医療地区/西村晃と劇団『みづぐるま』/小原元・藤川徹至を知る/一九四九年ごろの新日本文学会本部/文学サークル全盛時代/『勤労者文学』と徳永直/いわゆる勤労者作家とその作品/徳永・小田切の勤労者文学論争/『文学時標』と『文学前衛』
・第四章 レッド・パージと文学サークル
岩上順一と中野重治の書記長交替/朝鮮戦争とレッド・パージ/清瀬病院での入院待期患者家族大会/「職場死守闘争」と民同派/全官労中執南磐男の死/『キヨセ文学』の終刊/東京都下保谷町
・第五章 徳水直の家での「勉強会」
影山正治「一つの戦史」と徳永直「太陽のない街」/世田谷の徳永直の家/小沢清「町工場」出版祝の会/手塚英孝と中野重治/西野辰吉を知る/佐多稲子と雑木林のなかの家/霜多正次との出会い/佐々木基一とカミュの「ペスト」/六・六追放直前の蔵原惟人
・第六章 新日本文学会・国分寺班
霜多正次「木山一等兵と宣教師」/五回建てなおした西窪の家/軍法会議で死刑の判決を受けた霜多正次/梅崎春生の「桜島」/西野辰吉とニコヨン(職安労働者)生活/畔柳二美と路地の奥の家/国分寺班の人々
・第七章 私にとっての「五〇年問題」
マッカーサーと六・六追放令/コミンフォルム批判と日本共産党の分裂/臨時中央指導部と全国統一委員会/いわゆる『アカハタ』後継紙への弾圧/宮本百合子「風知草」と佐藤俊次医師/結核特効薬チビオン/米軍フィンカム基地/長い夜の会議の記憶
・第八章 『北多摩文学』のころ
『人民文学』の創刊/島田政雄論文のセクト主義的誤り/宮本百合子への悪罵と中傷/西沢隆二(ぬやまひろし)のダンス万能主義/世田谷――謄写技術学院/深川十全医院事務長/西野辰吉の「霜の朝の路上で」/平和擁護と民族独立のためにたたかう文学/「国民文学」論争/畔柳二美「限りなき困惑」と「川音」/宮本百合子の死と共立講堂での百合子祭
・第九章 『新日本文学』と『人民文学』
日本共産党全国統一会議と『理論戦線』/水野明善「文化文学戦線の統一のために」/元近衛師団司令部付陸軍中尉の入党/『人民文学』問題で激しい論議――新日本文学会東京支部総会/徳永直「私の自己批判」/霜多正次東京支部書記長/『人民文学』へ統一懇談会開催を申しいれ/モスクワ放送と全国統一会議の解散
・第十章 『文学芸術』の創刊
二人の「鶏飼いのコミュニスト」/鵜(うずら)惨酷物語/いわゆる五一年綱領/『文学行動』の人々/吉岡達夫と井上孝/石神井の檀一雄の家/『文学芸術』の同人たち/処女作「フィンカム」の反響
・第十一章 「神々」と「戦中派」
『文学芸術』と新日本文学会常任中央委員会/活発化した同人の創造活動/久保田正文らと『前後』の会/新日本文学会内の「戦中派」/同人会と「分室」/太宰治の色紙のある店/戸石泰一との出会い/ぼろアパート『美麗荘』の住人
・第十二章 新日本文学会第六回大会
二十数年帰っていない清瀬村/奉加帳と丹羽文雄/田宮虎彦と上林暁の家/後楽園・涵徳亭での準備会/新宿生活会館の会場/『人民文学』のメッセージ/詩人斎藤清と『文学芸術』同人たち/『人民文学』問題調査委員会
・第十三章 『文学芸術』派のクーデター?
中野区本町通の金達寿のアパート/徹夜の中央委員会/窪川鶴次郎と間宮茂輔の怒り/畔柳二美の家での深夜の酒宴/「トンビのおじさん」霜多正次/佐藤静夫とポケットのハガキの束/新日本文学会第六回大会後の書記局員/和製ユル・ブリンナー花田清輝/洋書と、仔犬のいる家
・第十四章 組織部専任書記のころ――一九五二年春
新宿駅前『聚楽』地下の焼酎ホール/大久保駅ちかくのモツ焼屋/中野重治の家と深夜の「襲撃」/小田急線豪徳寺駅ホームでの焚火/梅崎春生と中野重治/世田谷の手塚英孝の家/吉祥寺駅前の『月若』/西野辰吉と霜多正次/小説のなかの感情の起伏――という問十題/三鷹ヶ原の「決闘」
・第十五章 「血のメーデー」事件前後:
一九五二年五月一日/明治神宮外苑の会場/野間宏と『人民文学』の人々/渋谷コースか日比谷コースへ/人民広場への突入/デモ隊に襲いかかる警官隊/コン棒とガス弾とピストル/「行動隊」と「遊撃隊」?/濠端で黒煙を噴く米軍乗用車/日比谷公園のなかを逃げる/金達寿とLLサイズの登山帽
・第十六章 「統一」への足踏み
富士山麓調査団/『中央公論』の宮本顕治の論文/多喜二百合子研究会の結成/徳永直と山岸外史/「若き親衛隊」出版記念集会/文京区真砂町時代の野間宏/二階の部屋と階下の部屋/『人民文学』側の反省/『人民文学』指導部内の対立と混乱
・第十七章 「全学連」からきた人々
大西巨人の上京/「輝ける委員長」武井昭夫と、「全学連」グループの書記たち/大西巨人の野間・徳永批判/浅草『染太郎』での金達寿「富士のみえる村で」出版記念会/新日本文学会下士官部屋/七月臨時中央委員会での役員改選/一人で八つの役職/『新日本文学』三万部増刷問題/「マチスの華麗な表紙」の『新日本文学』一九五三年一月号/新日本文学会の会員数
・第十八章 新日本文学会の「再編・再組織」問題
一九五三年当時の会執行部/「大増刷」拡大カンパニアの失敗と財政的苦境/会の「再編・再組織」問題とその理由/批判をよんだ性急なやり方/宮本顕治「組織と批評の問題から」/そのころの『週刊サンケイ』編集部の人々/三歳半の長男と出火事件/『人民文学』「新しい出発」と『文学の友』への改題/急性肋膜炎で倒れる/金達寿「玄海灘」出版記念会
・第十九章 花田清輝編集長辞任「事件」
佐々木基一の家での文学研究会/山下肇らの第二次『北多摩文学』/会中央の「機関改編」問題とその理由/在京・近県会員有志懇談会/『新日本文学』「長期停刊」説と「32ページ会員頒布」案/花田清輝から中野重治への編集長交替/「機関改編」後の新人事/平野謙は編集委員をやめてはいない/本多秋五の「日記」と西野辰吉の「メモ」/新日本文学会第七回大会と新人事
・第二十章 六全協と私の「ある党員の告白」...
「党オルグ」田中新二と浜冬子という女/佐々木基一と大久保房男/「ある党員の告白」という題名/スターリン批判とエレンブルグの「雪どけ」/「近代文学』の人々の批評小説の主人公と作者の関係/「太陽族作家」と「新戦後派」/東中野モナミでの出版記念会/芥川賞候補「狂った時間」
・第二十一章 流派・グループと「転換」派
民主主義文学否定論ひろがる/奥野健男の形式主義的妄言/『旧ナップ』派と『新ナップ』派/現代批評の会と記録芸術の会/新日本文学会第八回大会/前大会決定方針の否定「九項目の自己批判」/小田切秀雄の組織報告と諸流派・諸グループ/最後のころの『人民文学』/『文学の友』編集長戸石泰一「現在の会」と二つの文学グループ/大衆的文学普及誌『生活と文学』/小沢清の入院
・第二十二章 リアリズム研究会の結成
結成総会に参加した十八名/会の再編と同人制/機関誌『リアリズム』の発行/ろくろつ会の人々/論議を呼んだ竹内好の「新日本文学会への提案」/統一組織と創造グループの問題/綱渕謙錠と岩渕鉄太郎/吉祥寺のバー『呉峰』/埴谷雄高と武田泰淳/『中央公論』でのルポルタージュの仕事/新日本文学会第九回大会/地方支部の廃止/武井昭夫が『新日本文学』の編集担当常勤常任幹事となる
・第二十三章 『リアリズム』から『現実と文学』へ
阿佐谷のアパート『阿佐ひ荘』/機関紙の定期刊行化をめざす新しく参加した人々/神楽坂『青柳』での新年会/津田孝と、はたさつき(中里喜昭)/逗子の本多秋五の家/六○年反安保闘争と『新日本文学』の反共雑誌化/新日本文学会、事務所を中野川添町へ移転/阿佐谷のバー『JAN』/「海と起重機」と日本鋼管川崎製鉄所/二十一名の「反党」文学者声明/新日本文学会第十回大会/『現実と文学』発祥の地?池袋の『バッカス』
・第二十四章 大衆的文学創造運動の発展
新宿西口の奨学会館ビル/各地に地域リアリズム研究会の結成すすむ/リアリズム研究会九州出張所?/東中野の新事務所へ移転/会員数一千四百十八名/『現実と文学』に執筆した人々/会員の交流・討論の場―全国研究集会/リアリズム文学賞の設定/『現実と文学』の発行部数/運営委員会と事務局のメンバー/現実と文学社の株式募集/戸根木印刷の人々
・第二十五章 新日本文学会第十一回大会.....
基地の町――千歳/キューバ事件と「スクランブル」/会の分裂を意図した武井昭夫の一般活動報告(草案)/いわゆる部分核停条約の問題/特定の流派の主張を会全体の文学理念と方法に/代々木八幡境内の会場/江口渙ら三名の会員による対案/武井昭夫らの悪質な動員戦術/大会出席有資格者三百五十九名中、二百名は大会前の新入会者/真実をみていない本多秋五の発言/大会後の「整理委員会」/江口、霜多、西野、津田らを除名/創立の精神を否定変質した新日本文学会
・第二十六章 日本民主主義文学同盟の結成
「暑い夏」と「寒い夏」/ベトナム・中国への六十九日間の旅/ベトナム作家協会の組織と活動/リアリズム研究会内の再編論議/同人総会と組織再編小委員会/運営委員会での検討つづく/新団体の創立をもとめる会外の文学者たち/同人総会で最終方針を決定/私第二学会館での発起人会/日本民主主義文学同盟という名称と『民主文学』という誌名/全電通会館での創立大会/文学同盟に参加した人々/西野辰吉の文章といくつかの誤り
・第二十七章 新しい統一的文学組織の発展
文学同盟の九段の事務所/事務局の人々/『民主文学』創刊当初の執筆者たち/「今月の推せん作」から出てきた新人/戦後の民主的文学雑誌の題字と高橋錦吉/勝山俊介と吉開那津子/土井大助と草鹿外吉/文学同盟第一回全国支部代表者会議/同盟員準同盟員数一千七百八十六名/北京でのアジア・アフリカ作家会議緊急集会/文学同盟第二回大会
・第二十八章 文学同盟第三回大会と、民主主義文学運動のその後の発展
キューバへの旅/ハバナ文化会議に参加した人々/キューバ作家・芸術家同盟本部/文学同盟の「読者拡大月間」/「民主文学』の編集機構の強化/幹事会第三回大会への報告草案を全員一致で承認/いわゆる「サークル誌評」問題/常任幹事会がきめた四つの措置/大会第一日目夜の懇親会/一部同盟員の役員候補辞退/第三回大会で選出された新役員/現代文学研究会という文学組織/第三回大会から第七回大会までの八年間/第三回大会以後の新人とその作品/文学同盟員の創造活動/発展する民主主義文学運動
あとがき
年 表