2000年9月、土曜日術出版販売から刊行された齋藤怘(マモル)の第8詩集。表紙写真は著者少年時代の漢江。
敗戦以来半世紀以上が経過し、日本と朝鮮との狭間で生きた多くの友が鬼籍に入った。未知の焦土に家もなくその日を生き、いつの日かソウルの友にも私の詩心を届けたいと念じていた。
日本文化が禁止されていた時代、韓国の月刊文芸総合誌『東西文学』が、いち早く私の特集を組んだことがある。これは偏に具常詩人、金光林詩人始め多くの方々のお力添えによるもので、つくづくと「詩の力」の素晴らしさを感じたものである。
齢を重ねるということは、命を絞るようにして書き続けた五感すべてが衰えることである。この第七詩集には、『遠い旅』以後に発表した作品の中から二五篇を選び、更に命を絞り、定稿として収録した。
表紙写真は、韓国・重要無形文化財竹坡さん初めての日本公演の折、プログラムを飾らせて頂いた私の詩「漢江」の背景で、少年時代の漢江の払暁という。来世紀に向け日韓の更なる文化交流を祈りたい。
我らの世紀を送るに当たり、善かれ悪しかれ万感胸に迫るものがある。このささやかな詩集の中に、一篇でも世代を越え、民族を越えて詩心を通いあえるものがあれば、私にとって望外の喜びである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 世紀を送る
- あどみらる東郷
- 漢江通り
- 漢江遊覧
- ソウルのクラス会
- パコダ公園
- 誕生酒
- 碑
- 寮歌
- 魂魄たちに
- 世紀を送る
Ⅱ 旅のつれづれ
Ⅲ 骨の道
- 達磨の硯
- 名前
- 五月。
- 骨の道
- 雨戸
- 生還
- 国立がんセンター
- 意思
あとがき