1997年11月、夢人館から刊行された坂本つや子(1926~)の第5詩集。第48回H氏賞候補作品。著者は東京生まれ、刊行時の住所は足立区西新井本町。
『黄土の風」『焦土の風』と書きついで今回『他人の街』を書き終わった。が、まだ完結ではない。ずいぶん、落としたり没にしたりした。わたしの記憶力が衰えないうちに書ききってしまおうと、焦りが少々出てきたのは七十歳も半途をすぎたことに原因がありそうだ。
わたしの作品を読んでくださっている方々に〈時代の証人〉として書き続けて欲しいと言われる。また、よく記憶していると言われることも多い。それは十三歳の頃、日本画を習いはじめたわたしに「眺めるな、よく観察せよ」と師が言われたのが大いに助けになっているのではないかと思う。『他人の街」の他人とは、自分でない人、血族とは違う、爽快な出会いと別れが、わたしを自立させたと信じているから、むしろ他人であることがわたしには魅力的なのだ。それは今でも変わらない。
一九六四年に、わたしは「他人の街」と題して詩を一篇書いている。昭和二十二、三年頃のわたしを書いた詩だ。
なんとかあと一冊で放浪篇にピリオドを打ちたい。八十歳になるかもしれないが。
(「あとがき」より)
目次
- 牧師
- ちいさな殺人 その一
- ちいさな殺人 その二
- ハリー再来
- 退院
- 梅子ねえさん
- 就職
- 倉庫・B1(ウエアハウスピイワン) その一
- 倉庫・B1(ウエアハウスピイワン) その二
- さむい夏
- 残飯
- 悪性貧血
- 病気の午後
あとがき