1994年2月、書房ふたばから刊行された西森茂(1933~2014)の詩集。表紙絵は著者。刊行時の著者の住所は高知県日高村。
早いものである。『野兎の決断』をまとめてから四年目が過ぎようとしている。当初からのテーマは「死」の認識が重要な中心であったが、今回の『雉狩り図』で、それが一層意識の上ではっきりとして来たように思われる。
通して私の意識を去らないのは、人の死が他者によって断りもなく脅かされたり支配されたりする事への得体の知れない恐怖である。この事は現代的問題として医療現場などでのゆきすぎた延命治療や、それらをめぐる尊厳死問題を待つ迄もなく、ますます明らかになろうとしている事である。しかしこのテーマの認識は私一人のオリジナルではない。既に『マルテの手記』などを通して、リルケが提起している事である。この上に時代の体制や公権力によって無念な死を強いられる生命の事を加えてみよう。
人は、自然に生れ自然に死んでゆくのが最も幸せな最期だとするなら、人はその為にどうすればいいのだろう。
言う迄もない事だが『野兎の決断』のテーマはこの事であった。しかしシリアスなテーマに過ぎたからか、疲れさせるという理由で大方の拒絶反応を招いてしまった事は私の不徳の結果であろう。
今度はその反省の上に立って和らいだつもりである。その証しの一つとして動物をやたらに殺さないようにした。追われる動物たちが死を越え何処で生き延びているというように一抹の希望を残すことで……。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 序・秋の小詩篇抄
- 死をめぐる断章Ⅰ
- 死をめぐる断章Ⅱ
- 死をめぐる断章Ⅲ
Ⅱ
Ⅲ
あとがき
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