1965年7月、思潮社から刊行された鮎川信夫(1920~1986)詩論集の普及版。
本書には、戦後、単独に書かれた私の詩論(一九四七年~六三年)のほとんどすべてが収載されている。
本を作るために書いたわけではないが、でき上ったものが一冊の本であるかぎり、著者はその本について責任を負わなければならないだろう。
なにぶんにも短かくはない期間にわたって、さまざまな状況の下に書かれた批評を集めただけに、その個々のものについては、今ではずいぶんと異論のあるものもすくなくはない。
しかし、私にとって、そうした個々の場合のせんさくよりも、私はいったい何をやったのか、私にとって、他の人々にとって、それは何だったかという、全体の反省のほうが大切である。それゆえ、この本は、失われた時の記念碑としてではなく、こうした問いに答えるために生れ出たようなものである。(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 現代詩とは何か
- Ⅰ詩人の条件
- Ⅱ幻滅について
- Ⅲ祖国なき精神
- Ⅳなぜ詩を書くか
- Ⅴ詩と伝統
- Ⅵ詩への希望
- われわれの心にとって詩とは何であるか
- 現代詩の機能
- 詩人と民衆
- Ⅰ権力への反抗
- Ⅱ過渡期の態度
- Ⅲ自己憐憫の限界
- Ⅳ安定意識について
- Ⅴ社会詩とタイハイ現象
- Ⅵ可能性と個性
- 現代詩の難解性をめぐって
- Ⅰ現代詩の難しさと大衆
- Ⅱ詩的想像力
- 戦後詩の拠点
- Ⅰ世代の交替について
- Ⅱグループの問題
- Ⅲ創造的エネルギー
- 現代と詩人
- 前衛の場について
- 比喩論二題
- Ⅰ映画における詩的メタフォー
- Ⅱ事実とメタフォー
- 浪曼主義と想像力
- 近代詩における「近代」の運命
Ⅱ
- ヴァレリイについて
- カフカの世界
- 地獄の発見
- Ⅰボードレールについて
- Ⅱ地獄の発見
- 『燼灰』のなかから――T・E・ヒュームの精神
- 詩と政治と表現の自由――パステルナークに関連して
- 「J・アルフレッド・プルフロックの恋歌」について
- 朔太郎考
Ⅲ
- 『死の灰詩集』の本質
- 詩人への報告
- Ⅰモダニズムの遺産
- Ⅱ観念の集団的背景について
- Ⅲ不安定な結論
- Ⅳ詩の鑑賞について
- 『死の灰詩集』をいかにうけとるか
- 『死の灰詩集』論争の背景
- 「反荒地派」について
- 翻訳詩の問題
- 戦争責任論の去就
- 現代詩に求めるもの
- 政治嫌いの政治的感想
- 精神・言葉・表現