1984年4月、彌生書房から刊行された西條嫩子(1918~1990)の詩集。装画は前田伸子。
誰しもその人生には予想もせぬクライマックスがあると言われている。私は昭和四十四年の初秋と、昭和四十五年の夏、自分を支えてくれた二人の男性、夫と父をつづけて失っている。殊に夫は思いもかけぬ謎の死であった。
父は喉頭癌の病臥中、孤独になった私の生涯を詩に託すよう、強く希望した。よく考えると、私の詩作は自分の意思のようにも感じられるが、過半は亡き父に託されたような気がする。父は私自身よりもよく、独りで行かねばならぬ私の生命力の根源をいちはやく察知していたらしい。(親バカでもあろうが。)
そして、夫と父を失った後、さすがに私はショックで歩行さえも困難になってしまった。すると弟八束が海外旅行をすすめてくれ、ベルギーに於ける国際詩人会議の会場、海岸クノックまで義妹紀子を附添わして同行させてくれた。
二人の没後、もはや十五年余を経過している。寂しがりやの私がよく歩いて来られたと不思議でならない。
(「あとがき」より)
目次
- 泡幻
- 孤独
- 飛翔
- 不協和音
- 紫陽花の咲くころ
- 唐草模様に
- 繊い劇場
- 色彩感覚
- 海
- 葉かげ
- ロングビーチ大磯にて
- すべらかな黎明
- maniac
- intestat
- 邂逅記
- 顔
- 青い降車券
- 春来る……
- スケッチ
- 日記
- ベネチアにて
- イタリアの月
- コモ湖二題
- カプリ島紀行
- 泳ぐ
- 惑星
- たびげいにんの唄
- 背中
- 地図物語
- 拍手
- 水族館
- 異邦人
- 席
- 遠い日異聞
- 海恋
- 真昼の人
- タランテラ
- 花びら
- コラム
あとがき