1998年4月、山人社から刊行された内田聖子(1943~)のエッセイ集。
日本のエネルギー産業が石炭から石油に移行する時代、歴史に残る三井三池闘争があり、れと並行して大正炭坑の闘いがあった。
中小の大正炭坑を拠点に大正行動隊を組織して積極的に活動、華々しくクローズアップされたのが谷川雁である。
朝日人物辞典によれば、谷川雁は一九二三年、熊本県水俣市生まれ。東大社会学科卒。六〇年刊行の『谷川雁詩集』では「瞬間の王は死んだ」と言い、詩をやめることを宣言。革命の原点を探る「原点が存在する』、『工作者宣言』などがあり、六〇年安保では多くの学生や活動家の思想上のよりどころとなる。その後も新左翼陣営や全共闘運動に影響を与え、教祖的存在。天才的オルガナイザーと言われる。ある
聞くところによると、眼科医の息子である彼は三歳未満の時、検眼表を全部、暗記したという。早熟であった。
私は縁あって、彼が組織したラボ・パーティーという語学団体で約八年間、子供たちの指導にあたった。谷川雁は遠くに崇め、時には近くにあって濃密な話をする人でもあった。
それは一般に語られている谷川とかけ離れているところが少なくない。その素顔を描きたいと思った。
これは私が見た谷川雁のデッサンである。
(「はじめに」より)
目次
はじめに
参考文献
跋になるだろうか 長谷川龍生
理解したいぎりぎりの心情 倉橋健一