1971年5月、晶文社から刊行された三木卓(1935~)の第エッセイ集。表紙写真は東松照明(1930~2012)「アスファルト」(1961)。
これはわたしの初めてのエッセー集だ。正直いってこんな本を作れることになるとはあまり考えていなかった。なにしろ、そのときどきに応じて書きつけてきた文章で、本にする配慮などあったわけではない。だから、こうして一冊の本にするために読み返して見ると、自分で自分の顔をはじめて見返しているような気分だ。
今になって見ると、これは書いておきたかったとか、自分と関わりのある詩人たちのこともこれでは片手落ちだ、とか心が残る。しかし今はしかたがない。これからするよりない。
約十年にわたるものから選んだが、言えることは、出来はともかくとして、それぞれの時点で、わたしとしてはできるだけ卒直であろうとねがいながら書いた、ということだけだ。何か一つでいいから心に残る本になっていて欲しい。(「あとがき」より)
目次
I
- 詩――なぜ
- 目撃者としての詩
- 憎悪について
- わたしの敗戦体験
- 詩に何が問われるべきか
- 権力・詩・人間
- 戦後世代のクリストファー・ロビン
- ソビエト詩との出会い
- 詩のことば詩の力
Ⅱ
Ⅲ
- 創造的想像力の条件をめぐって
- ショーロホフの世界
- 宮沢賢治の美しいもの
- 子どものイメージが放つもの
- 本を読む
あとがき