2006年11月、書肆山田から刊行された財部鳥子(1933~)の第10詩集。装幀は亜令。
中国のある詩人の随想集のなかに「日漸衰老的女詩人」というタイトルがあって、これは外国小説の中の人物のことらしいが、「日々老衰する女詩人」という言葉は私にとても魅力的に感じられた。日々老いゆくことは人間にとって新鮮な体験ではないだろうか。この言葉を拝借して「老衰する女詩人の――」をサブタイトルにいくつかの詩を制作した。ところがそれをお読みになった八十代の詩人から「私ほどに老いたらもうこういう詩は書きませんよ」と幾分苦々しげにいわれた。帰り道のない体験であるのにそこへ思い至らないのは暢気なことである。いろいろ考えて「衰耄する」に改めた。人類世界も私も衰耄してゆく実感は老衰より強いかもしれない。(「あとがき」より)
目次
- 水の味
- プール館
- 一月の顔
- 禁句
- ステージに硝煙うずまく
- 潭という時間
- 外号
- 夕陽の階段
- 霊の過剰
- プリズン島
- ドライヴ
- あこがれの長征
- 理想生活
- π
- 十二月
- みみずく「ゼン」の思い出
- ウパニシャッド
あとがき