2014年9月、思潮社から刊行された近藤久也(1956~)の第6詩集。装幀は近藤祈美栄。
目で見たものや実感した(はず)のものは日常の言葉に置き換えるとどうもわざとらしく、ぎこちなくなるのはどうしてだろう。置き換え作業はどこかいかがわしい操作のようだ。そうではなく、稀に自らの内側で日常の感覚とは離れて、ほんの微かに言葉に似た産まれたてのものが忘れかけた遠い体感としてもぞもぞし始めるときがある。それは、いつもどきどき、はらはらさせられ経験値や常識や賢しら口がまるで役立たずで無視される。それにその作動装置の秘密は永く隠されたままだ。見える世間を我が物顔で行き交う言い訳がましい物言いに、それらをできるだけ紛れ込ませたいと思う。危ういなにものかを編みあげていきたい。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- うなすな
- 丘
- 地図
- 楽園
- うすばかげろう
- 睦言
- ナイト・ズー
- 遠い腕(かいな)、野っ原で怪物に
- 芽吹く
- フラーのこと
- ごちそう
- かぶさる
- 無名
- 崖の下
- 消費
- 梅田
- 転がるように
- 老いていく
Ⅱ
あとがき