奪われるもの 水芦光子

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 1975年4月、ゆまにてから刊行された水芦光子(1914~2003)の書き下ろし長編小説。小説本としては9冊目にあたる。装幀は染色研究家の木村孝(1920~2016)。第3回泉鏡花記念金沢市民文学賞受賞。

 

 北陸線の車窓から白山連峰を仰ぐたびmあの山の麓ではどんな人たちがくらしているのだろうか、思いめぐらしたものですが、あまりに美しい自然は、人間を呪縛してしまうのではないか、と空恐ろしくもなったのです。
 この小説のなかの人たちも、私のそんな発想とは無縁でなさそうです。
 一つの小説に永い月日をかけたというのではなく、ただただなにかもやもやした穴ぐらを永くうろつきすぎた感じで、漸く仕事が終わってみると、適当なところで適切な誰方かの助言があったのでした。そうした方々に感謝をこめて、あとがきといたします。

 小説の書きはじめと終りの項に、しきりと心にうかんだ室生犀星先生の詩、わが主題を得た思いであります。

 

ゆきふらばわがつみが
ゆるされむ。
月あをみ
逢われずかへりぬ

 

(「あとがき」より)

 

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