2015年10月、ふらんす堂から刊行された鳥居万由実の散文詩集。装幀は甘夏図案室。
この作品を読んで、なんともいえない驚きをおぼえている。
若さと才能とネット世代の感性と、それから鳥居さん独自のというほかない世界観がこのような作品を書かせたのだろうか。大きくくくれば一種のメタフィクション、作品を作品として成り立つ一歩手前でとらえ、したがって人物たちも登場人物となる一歩手前の未分化状態に置く、というコンセプトがみえかくれしているが、それがすこしも頭でっかちにはみえない。言葉はわるいかもしれないが、鳥居さん独自のルーズな女の子的書記スタイルがかえって功を奏しているようだ。加えてそこに、インテリジェンスあふれる哲学的考察からとぼけたSF風、そしてあっと驚く学園ドラマ的なものまで巻き込んで、全体として、いや全体もなにもない、ただ無限にひらかれているようなフラグメントの宇宙が渦巻いている。(「解説/野村喜和夫」より)