1973年9月、明治書院から刊行された黒田三郎による現代詩入門書。「味わい方叢書」の1冊。
正直に言うと、『詩の味わい方』を問われたら、味わい方などないと言いたいところです。しかし、一般読者には、味わい方があるという気持があって、それを求める欲求もまた激しいように思います。この本ができたのは、全くそういうかねあいからです。
全体の構成上、敬称はいっさい省略しました。なかには、以前雑誌に発表したもので、原文に敬称がついているのに、この本ではそれを削りました。非礼にわたった点はどうぞお許し下さい。この本の性質上、部分によっては、できるだけ多くの引用をし、またできるだけ多くの書名をあげたりしました。自分の無学さはよく知っているつもりです。あくまで読者の便宜を考えて、敢てしたことです。自分の無学を糊塗するつもりは全くありません。
(「あとがき」より)
目次
詩とは何か
- 詩そのものをよむのが先決
- 自分の感情や知性を大切に
- 老ゴリド人のことば
- みなさい
- 目読・音読・筆写
- 朗読をきく
- 食生活の変化
- 外国の影響
- 画一化と手づくり
- 味わい方の強制
- 法則や規範
- 内部から生まれてくるもの
- シンメトリーとまんだら
ふるさと
- 室生犀星「小景異情二」
- 第一行だけを覚えている読者
- ことばの魔術
- 故郷喪失者
- 屈辱感
- 詩人と市民
- 愛憎
作者のことば(対談 壷井繁治・黒田三郎)
夕焼け
虚無の芸術
- 青白い惑い
- 萩原朔太郎
- 『不安と再建』
- ニイチェ
- 世代論
- 八月十五日
- 生き甲斐の調査
- 会田綱雄「伝説」「trash」
- 石垣りん「シジミ」「表札」
- 心のやさしさと深淵
- 石垣りん「鬼の食事」
- 随筆集『ユーモアの鎖国』
戦後詩の原点
出会いと位置づけ
アヴァン・ギャルト
- 前衛
- 『詩と詩論』
- 海外の新運動
- 平戸廉吉「飛鳥」
- 岡本潤「発狂した電車」
- 萩原恭次郎「日比谷」
- ダダイスト新吉の詩
- 『薔薇・魔術・学説』
- 北園克衛「人形とピストルと風船」「記号説」
- つまらない現実を面白くする
- 西脇順三郎「天気」「旅人」
- 富士原清一「艦棲」
- 春山行夫
- 安西冬衛「春」
- 面白がる精神
- 近藤東「レエニンノ月夜」
- 竹中郁「ラグヴィ」
現代詩の難解さ
政治意識と抒情
詩におけることばと形式
散文の論理と詩の論理
- ことばの魔術
- 舞踊と歩行
- 外山・山「社会学の原理に題す」
- 白鳥省吾「森林帯」
- 一方は詩と言い他は非詩と言う
- 萩原朔太郎「小出新道」
- 語法無視
- 誤謬の活用
- 比喩
- 触媒
- 石原吉郎「ヤンカ・ヨジェフの朝」
- 一編の詩全体が一個の暗喩
実在の岸辺
- 変ないやらしさ
- 村野四郎「花を持った人」「消息」「魚」
- 一人称の仕掛け
- 村野四郎「あざみ」「魚における虚無」「夜の歌」
- 伝統の理解と非伝統的表現
- 村野四郎「歌」
- 合理的な人間の書く非合理的なもの
雪明りの路 冬夜
- 伊藤整の印象
- 逃亡奴隷と仮面紳士
- 原型
- はかない原形
- 伊藤整「もう一度」「林で書いた詩」
- 青春なればこそ
- 伊藤整「梅ちゃん」「夕方」「雪夜」
- 自伝的な小説と青春の詩
- 伊藤整「面倒な言葉」「言葉」
- 暗示的な
- 伊藤整「雪あかりの人」
- 大正末期という時代とほろんだ可能性
たくさんの詩
- 本屋の店頭に出ない詩
- 多くの自費出版個人詩集と多くの同人雑誌
- 見渡しのきかぬ現況
- 働く者の詩
- 日常生活
- 労働者の詩と企業のコマーシャル
- 時代の状況
- 武島羽衣「花」
- 文部省唱歌「われは海の子」「村祭」「春の小川」「故郷」
- 現状をうつす鏡
- 失われたものはあまりに大きく
参考書
あとがき