1991年8月、私家版として刊行された町田志津子(1911~1990)の未刊行詩篇集。
本書には町田志津子遺稿のなかから昭和10年から二五年の初期の作品を収録致しました。この時期約一五〇編の詩が残されておりますが、このうち三十数編の詩は最近発見された第一詩集『幽界通信』に同時収録すべく準備された古い原稿の中に収めらております。紙面の都合か詩集から削除されたこれらの詩は新たな創作活動の多忙にまぎれ、その後再び詩集に収録される事も無く原稿のままのこされたものと推察されます。
本書のⅠ抒情歌・Ⅱ風景はこの原稿を基に、創作ノートの中から若干の詩を追加編纂されたものです。Ⅲ習作は詩誌『麺麭』同人以前の作品を、Ⅳは家族を題材としたものを、Ⅴは既刊詩集には未収録の歌曲の歌詞を収めました。
遺稿を整理してゆくなかで、この時代は子供達が母にまつわりつき、母に密着して生活し、戦中・戦後の混乱の激動に晒された時期であり、家族の記録としても作品を一冊の本に纏めて置くことに致しました。
著者の一面を知っていただくためにも、ご一読して頂ければ幸です。
序をお願い致しました『塩の会』の方々には、遺稿集『潮の華』の年譜の編纂など種々お世話になり、今回本書の編纂にあたりご指導をうけました。本紙をかりて厚く御礼申しあげます。
(「あとがき/飯塚晴彦(町田志津子長男)より)
目次
『雅歌』によせて 小川アンナ
Ⅰ抒情歌
- 木の花の咲くころ
- 青葉
- 海の祭
- 童話
- 抒情歌
- 春の埃
- 雪
- 心象
- ある人に
- 牧歌
- 海港
- わが海
- 父祖の海
- 岳麓抒情
- 岬の歌
- 断章
- 西浦の子供
Ⅱ風景
Ⅲ習作
- 六月の穂麦の風は
- 電車の中の仔牛
- 夢
- 黎明
- 習作
- 黄ざく
Ⅳ家族へ
- 妹よ
- 童話
- 無題
- 彦えんどん
- 七夕の詩(二つ)
- 伸子の詩
- 浜辺で
- 無題
- お土産
- 智慧の翼
- 梅雨のはれ間
Ⅴ歌曲
- 潮風のうた
- 心と心よせあって
- 封のしてない間ぬけな手紙
雅歌作品年譜
あとがき