1999年11月、書肆山田から刊行された山崎佳代子の詩集。装画はミラン・トゥツォビッチ「1917年、9月26日」。
一九九九年春、空襲警報下のベオグラード――
川のむこうで大きな橋が崩れる。
風が木の葉を音もなくはこぶ。
人は、黙って旅立ち、姿を消す。
そこにあるのは、数えきれない終わりという始まり。
けれどもその黒闇の中で、裸身になった愛は微かな光をつかむだろう。
凍るような日々を懐く言葉をみつけて。
いのちを抱く海の絶えることのない湯揺となって。
目次
- 産砂
- ゆるやかな坂道――ゆるやかな坂道 森からはじまり
- 月と空き瓶―砂地 月と空き瓶 草地にトランクは残されて
- 限りなく透明に近い……―浴室告白限りなく透明に近い……
- 悲しい果実――舟紫、三月悲しい果実
- 閉ざされた街――告知 極楽鳥 夏の雨 閉ざされた街
- かみさまのおくりもの――水のうた かみさまのおくりもの 花嫁
- やさしい音楽――いのち やさしい音楽 空気 夏の窓
- 森、隠れ家――おくりもの、やさしい手奇跡、靴果樹園、ぶどう 雨になれば森、隠れ家
- 夏の家――ひみつ 夏の家 壁、おもいがけず……黄昏
- あどけない話――苦い水 あどけない話 すべてはわたしにであうまえのこと つかれた魚 空 最後の婚礼
- 航跡――セピア、記念写真 航跡 瑞々しい思い出
- 雨、そして秋が来て――雨、そして秋が来て 九月、なきたいきもち 木曜日 蛇