1990年3月、宝文館出版から刊行された両角享子の第2詩集。
昭和六十年六月に初めての詩集『あの森のむこうには』を出してから、早いもので五年の月日が過ぎました。
その間、多忙ながらも平凡な日日を送っていましたが、一昨六十三年九月、三度目の旧満洲営口、大連を訪問することが出来ました。
この旅行では思いもかけず、営口でかつての我が家に四泊致しました。父が営口税関に勤務していたのは、私が三歳から九歳迄で、官舎は遼河の河岸にあり、現在はホテルになっていました。 宿泊中は、昔、毎日していたように、一日中官舎の裏を流れている遼河を眺め、河口に落ちる夕陽を見て過ごしました。
帰宅してからも暫くは興奮状態が続いていましたが、その感動が消えぬ間にと思って一気に書いたのが「夢」、「遼河」、「故郷」Ⅰ……Ⅳの六篇の作品です。
題名を「遼河」としましたのも、私の心の中を大きく占めている遼河が一般にはあまり知られていないのが残念で、かねがね一度は文字にしたいと思ったからです。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- そんなに急がないで
- 庭のかきっぱたの茂みのなかに
- 白い子猫
- 精霊流し
- 春一番
- 木枯らし
- 紫陽花
- 月夜
- すすきの穂波
- 月と雁
- 涙と愛は
- 時
- カーテン
- 花びら
- パリ
- 乳母車
- 庭にもう少しの広さを
- ビール讃歌
- つわぶき」
Ⅱ
- シンガポール
- 夢
- 遼河
- 故郷
- Ⅰ河
- Ⅱ木
- Ⅲ家
- Ⅳ町
- 海
- 花束を捧げよう
- 淋しいときには
- 人間が好き
- 今
あとがき