2008年4月、中澤信男によって刊行された筧槇二(1930~2008)の短編小説集。装幀は中澤信男。
みんな古い小説である。あちこちに書き散らしてあつたものだ。一冊にまとめておかうと思ひたったのは、自らの終焉も近いなといふ自覚もあつたし、われわれの世代がゐなくなったらみんな忘れ去られる事柄だなといふ思ひもあった。
なにせ、日本がアメリカと戦争したことなど全く知らない子供が続出してゐる世の中になった。「それで、どっちが勝つたの?」と聞かれて唖然としたことがある。
昭和の波瀾を通過した青春期の記録をまとめておかう、といふのも、年相応のセンチメンタリズムととられるかもしれない。いや、たぶんさうだらう。
それでもいいや、とも思ふ。こんな人生もあったんだぞ、お前たちは戦争するなよ、と子供たちに伝はるものがあれば、満足。
猿の群れは喧嘩もするが、同族同士の攻撃や殺しあひはしないさうだ。ある意味では、人間は猿以下の生き方しかしてゐない。
(「あとがき」より)
目次
- 真昼の夕焼け
- あめりか
- 赤いカンナ
- 除名
- でかんしょ
- よこすか
- どの面さげて
- マル呂の怪
- マルろ号作戦
あとがき