1988年8月、崙書房出版から刊行された柏木勇一(1941~)の第4詩集。著者は岩手県生まれ、刊行時の住所は千葉県柏市。
衣服はもちろん、手のひらや指先についた樹液、草の汁は洗っても洗ってもなかなかとれません。樹液や草の汁も実はちゃんと生きていて皮膚の穴に小さなすみかを探して、そこに居ついてしまうと思うほどです。
春先になるとアリたちが必死の形相で食物を運ぶ姿をみます。激しい雨の後、庭に溜まり水ができて、あのアリたちの宮殿も倉庫も路地もハイウェイも一瞬にして消滅したと思うのですが、水が消えると、何事もなかったようにアリたちは活動しています。
日々見かけるもの、日々私たちが体験しているもの――それらは果てしなく続く模様の流れの一部分に過ぎません。ここにとりあげた作品は、完成された事物、固定した現象ではなく、夥しい模様の一部をちょっとつまんで書いたものです。私自身がフワリと大空に浮かんだり、大きな木のてっぺんに昇ったつもりで。
一九七八年七月以降、仙台の同人誌「方」に発表した作品を中心にまとめました。後の二篇「ヒロシたちの断片」「草原に静止する獣たち」は、作品の末尾にもあるように、ずいぶん前に、故杉克彦さんのすすめで「銀河」に掲載させていただいたものです。
(「あとがき」より)
目次
- 会話
- 水の時刻
- 言葉
- かけぬけよ草原 1
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- さまざまな朝
- 朝はまぶしく
- 朝の影
- 朝の痛み
- 旅の朝
- 台風の夜
- 樹木になる日
- 木の橋
- エレジー
- ヒロシたちの断片
- 草原に静止する獣たち
あとがき