1988年9月、青磁社から刊行された上手宰(1948~)の第3詩集。装幀は百瀬邦孝。著者は神楽坂生まれ、刊行時の住所は千葉市花見川。
夢は人をめざめさせるために枕元を歩いていくのだろうか。それでいて私が目をさますと、追いつけない速さで遠ざかってしまう。夢を清書する――そのことを果せぬ理由である。ただ、はるかなものからの「追伸」だけが私に残されている。その夢の断片(あるいは生活の断片かも知れない)は、かすかな引力を持っていて私に詩を書かせ続けてきた。本題のつきたところで書き加えられる、ささやかなできごと、小さな約束……けれど一方では、それを書かなくては手紙に封をする気にはなれない、心にかかること……それらが「追伸」の形をとるのだろう。私の詩に似ていると思い、詩集名とした。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 二人づれのif
- 虹と地下鉄
- 釘の穴
- ロール・プレーイング
- 埋められる夢
- アスファルトに咲く花
- 作りつづける
Ⅱ
- 夢の波打ちぎわ
- 泣虫
- シャベルで夢を
- 電話
- 肖像写真
- 絵本のなかの停電
- 継ぎ目のある距離
- 魔法がとけて
- 炎を秘めて
- 手紙
- 追伸
- 夢のいれもの
- 虹の舞台裏
Ⅲ
- 終わりのとき
- ユダの復活
上手さんについての覚え書き 吉野弘
あとがき